病気・予防接種
Q. 生後6か月。二分脊椎と診断されました。今後の経過や治療について教えてください。 (2015.2)
- (妊娠週数・月齢)6か月
生後6か月の女の子です。先日、二分脊椎と診断され、ショックを受けました。ネットなどで調べると、手術や長い目で見た治療が必要になる病気とのこと。これからちゃんと育てていけるだろうかと不安でたまりません。治療のことや今後の経過などについて教えてください。できるだけのことをしてあげたいと思います。
回答者: 多田裕先生
生後6か月の赤ちゃんが二分脊椎と診断され、さぞご心配のことでしょう。このお子さんについて考える前に、二分脊椎とはどんな病気なのか、簡単に説明しておきたいと思います。
私たちの背骨(脊椎)は椎体という骨が連なって形成されており、椎体からは左右に突起が出ており左右の突起が後ろで融合します。このため背中の真ん中にごつごつした出っ張りが連なって触れるのです。この突起と椎体の間には神経管と呼ばれる管(穴)があり、その中に「脊髄」が入っています。脳から出された指令が「脊髄」を通って背中や手足の神経へと伝わることで、私たちはさまざまな身体機能をコントロールすることができます。
「二分脊椎」とは、この脊椎のどこかに神経管の閉鎖不全が生じることで起きる、多様な病変の総称です。閉鎖不全の生じる場所や状態、程度によって、症状の出方は大きく異なります。
重症例では、脊髄神経組織の一部が飛び出して皮膚の表面にこぶを形成したり(こぶは皮下にできることもあります)、直接露出したりし、そこから髄液が漏れ出て細菌感染を起こすことがあります。また、腰仙部に好発するため、下肢の麻痺や感覚障害、排泄機能の障害などを伴うこともあります。
このような重症例は出生後すぐに診断がつくので、小児科や脳外科、整形外科など関連する科の医師がチームを組み、この病気による症状や発育への影響をなるべく減らせるよう、手術やリハビリなどの適切な治療を行います。なかには、診断がついても症状などがなく、急いで治療する必要がない例もありますが、からだが大きくなっていくとともに症状が出てくることもあるので、専門医による経過観察や、必要だと判断されれば予防的に手術などの治療が行われることがあります。
しかし、その一方で、症状が出ないまま、本人も二分脊椎があることに気づかずに生涯を終える方もいます。
さて、ご相談の赤ちゃんについて考えてみましょう。生後6か月になって二分脊椎と診断された経緯が書かれていないため正確なことはわかりませんが、前述したように重症の場合は出生後すぐに診断がついて治療が開始されることから、おそらく、皮膚の表面や皮下に神経組織が飛び出ているような重症例ではないものと推察します。現在、何か目立った症状があるということでもないように思えます。一般的には、別の目的でレントゲンを撮ったら脊椎の一部が開いていたり、たまたま背骨を辿っていて骨の欠損に気づいたりすることが多いようです。
いずれにしても、「二分脊椎」の病態や症状はさまざまです。ネットなどで調べると症状の顕著な重症例の記載が多いので、ご心配になるお気持ちはとてもよくわかりますが、今後どのような経過が予想されるのか、どんな治療が必要になるのかなどは、専門医がレントゲンやMRI、CT検査など精密検査を行わないと正確なことはわかりません。
まずは、小児専門病院の脳外科や整形外科などで相談し、詳しい検査を受けることをお勧めします。検査の結果、当面は経過観察を続ければいいということなら、あまり将来のことを心配し過ぎず、赤ちゃんの成長を見守っていけば良いでしょう。
二分脊椎の原因についてはまだ正確なことはわかっていませんが、原因のひとつに、妊娠ごく初期の葉酸欠乏があるといわれています。欧米などでは妊娠前からの葉酸摂取を推奨した結果、発生数が減少したとの報告もあります。
これから妊娠を考えている女性は、葉酸の含有量が多い緑黄色野菜や果物、豆類などを含むバランスのよい食事を心がけることとともにサプリメントなどで葉酸の不足を補うことが、こうした病気の予防につながるということもぜひ知っていただきたいと思います。