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病気・予防接種

Q. 1歳2か月で、病原性大腸菌O26に感染。病気のことがわからなくて不安です。 (2017.8)

  • (妊娠週数・月齢)1歳2か月

1歳2か月の娘が、下痢、嘔吐、発熱し、便検査の結果、病原性大腸菌O26と診断されました。ベロ毒素については、まだ検査結果が届いてません。整腸剤と抗生剤を粉薬で飲んでいます。病原性大腸菌O26、ベロ毒素とは、どういうものなのでしょうか? 完治するのか、何か後遺症はあるのか等、知識がなくて不安です。

回答者: 板橋家頭夫先生

 大変心配なことと存じます。寄せられた情報だけでは、楽観的なことも悲観的なことも断言できませんので、以下の説明は一般論としてご理解いただければと思います。

 大腸菌は通常でもヒトの消化管に存在しますが、下痢症状をおもな症状とする大腸菌を総称して下痢原性大腸菌といいます。この菌によって汚染された食べ物などが原因で感染します。下痢原性大腸菌は下痢の発症のメカニズムによって5種類に分類されており、それらは、①病原性大腸菌、②腸管侵入性大腸菌、③毒素原性大腸菌、④腸管出血性大腸菌、⑤腸管凝集付着性大腸菌です(したがって厳密には病原性大腸菌は下痢原性大腸菌の1つ種類で、下痢を起こす大腸菌すべてを病原大腸菌と呼ぶのは適切ではありません)。

 O(オー)抗原とは大腸菌の表層にある一部の構造がヒトにとっては異物と見なされることを利用した分類の方法です。お子さんから検出されたO26は、O157とともに腸管出血性大腸菌の仲間として知られています。なお、症状のあった患者さんから検出された腸管出血性大腸菌の約70~80%がO157で、O26は10~20%程度です。

 腸管出血性大腸菌による感染は、血便を伴う下痢が特徴的ですが、実際には無症状のものから、全身状態が冒され死亡する例までさまざまです。ベロ毒素とは病原出血性大腸菌が産生する毒素の一つで、腸管の細胞のみならずその他の臓器に重大な影響を及ぼすことが知られています。溶血性尿毒素症候群や急性脳症がその代表格です。具体的には、血便を伴う下痢がはじまって数日後に尿量の低下や血尿がみられるようであれば溶血性尿毒素症候群が疑われます。急性脳症によって、けいれんや意識レベルの低下が出現することもあります。これらの状態になったときには、生命が危険にさらされます。また、神経学的後遺症も懸念されます。

 現時点ではベロ毒素産生菌か否かも不明ですので、お子さんが今後どのような経過をたどるのかは予測できませんが、十分な注意が必要かと思います。