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病気・予防接種

Q. 生後8か月でまだMRワクチンを打っていません。麻しんの感染が心配ですが、気をつけることはありますか? (2018.6)

  • (妊娠週数・月齢)8か月

生後8か月の女の子がいます。最近テレビで麻しんの流行が報道されていて、うちの子も感染するんじゃないかと心配です。MRワクチンは1歳を過ぎてから打つようですが、それまで気をつけることを教えてください。また、もし感染したらどうなりますか?私自身はワクチンを受けたか、かかったかも曖昧なのですが、私もワクチンを注射したほうがいいですか?

回答者: 横田俊一郎先生

 今年になって麻しんが沖縄で発生し、全国へ拡がっていることが大きなニュースとなっています。「沖縄へ旅行する予定だけれど、どうしたらよいでしょうか」というような質問を外来で時々受けるようになりました。

 3月中旬に台湾から来て沖縄本島を旅行していた人が途中で具合が悪くなり、入院して初めて麻しんと診断されました。この間に接触した人に麻しんがうつり、沖縄県だけでなく愛知県、東京都、神奈川県などにも感染者の報告が増え、この旅行者とは関係なく福岡県でも感染者が増えています。しかし、沖縄では5月上旬に報告された患者を最後に新たな報告はなく、約100人の感染者で収束に向かっているようです。

 日本は2015年3月27日、世界保健機構(WHO)西太平洋地区事務局から「麻しん排除」の認定を受けました。認定は、土着のウイルスが3年以上流行を起こしていないこと、適切なサーベイランス体制()があること、流行性感染の阻止を裏付ける遺伝子型判定に関する証拠があること、が条件となっています。今回は台湾からウイルスが持ち込まれたので、「流行」というより「多発」というべきものと考えられています。「麻しん排除」と認定されても、免疫のない人がいる限り,麻しんの発生はいつでもありうるのです。

今回、感染した人の多くは20歳~40歳代の成人です。小学校入学前の子どもにも感染者がありますが、多くは予防接種を受けていません。予防接種を受けていれば万が一かかっても大部分は軽症で、遺伝子検査などの特別な検査をして初めてはしかと判る程度の症状しかないことが多いです。

 麻しんの予防接種は1歳代と小学校へ入学する前の1年の2回、MRワクチン(麻しん風しんワクチン)として接種することになっています。これらは時期が来たらなるべく早く接種することが大切で、きちんと受けている子どもは麻しんに感染する可能性はほとんどないと考えてだいじょうぶです。20~40歳代の成人で、ワクチンの接種歴がはっきりしない人、ワクチンを1回しか受けていない人はワクチン接種をする必要があります。ご質問をいただいたお母様はこれに該当し、今回の麻しん騒動が収まっても危険がなくなるわけではありませんので、忘れずに接種してほしいと思います。

 問題は1歳未満で定期接種の対象となる前のお子さんです。1歳未満のお子さんでも麻しんに感染することはありますので、周囲に麻しん患者が多いときには生後6か月以降ならMRワクチンを接種することができます。ただし、1歳未満だと長く続く免疫が獲得されるかどうかが定かでないため、1歳になったら普通のお子さんと同じように接種することになっています。また、1歳未満での接種は定期接種ではないので自費接種となり費用がかかります。ただし、今回沖縄県の一部の自治体では、感染の拡大を防ぐために、6か月~1歳未満の乳児への予防接種を県の補助も含めて全額公費で負担し、無償化しました。ご質問のお子さんにこの接種が必要かどうかは、周囲の麻しんの発生状況、沖縄へ出かけるなどの行動予定を総合的に判断して決めることが必要ですので、かかりつけの小児科医に相談することをお勧めいたします。

…感染症の発生状況を調査して集計し、感染症の蔓延を防ぎ予防に役立てる一連のシステム