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病気・予防接種

Q. ミルクを飲むたびに下痢をする6か月の子。乳糖不耐症でしょうか。 (2019.5)

  • (妊娠週数・月齢)6か月

生後6か月の子が離乳食を始めた直後に下痢になり、離乳食をストップしたのですが、その後ミルクを飲むたびに黄色い水下痢をするように。便に白いミルクの粉のようなものが一緒に出ていることもあります。小児科を受診したところ「離乳食による消化不良」とのことで整腸剤を処方されましたが、いっこうに治らず、別の小児科を受診したら、「ミルクを薄めて飲ませてみては?」と言われ、実践しましたが改善されませんでした。どちらの病院でも乳糖不耐症とは言われませんでしたが、自分なりに調べて当てはまることが多かったので、ノンラクトというミルクといつものミルクを混ぜて飲ませたところ、下痢の回数が減りました。やはり乳糖不耐症なのでしょうか? 現在、離乳食はストップしていますが、いつから再開したらよいのでしょうか?

回答者: 横田俊一郎先生

 離乳食を開始すると便がゆるくなることはめずらしくありません。新しいものが腸の中を通過し消化されるのですから、仕方のないことかもしれません。これを病的な下痢と考えるか、正常範囲内の下痢と考えるかは、赤ちゃんの状態や体重増加をみて決めなくてはなりません。

 ご相談の「乳糖不耐症」は、母乳やミルクに含まれる乳糖をグルコースとガラクトースに分解する乳糖分解酵素の活性が低下しているために、乳糖を消化吸収できず、下痢を起こす病気です。生まれつき乳糖分解酵素の活性が障害されている病気もありますが、きわめてまれな病気で、新生児期あるいは乳児期早期から激しい下痢が続き体重が増加しないことが特徴です。
 
 日常みられる乳糖不耐症の大部分は、急性胃腸炎などの後にみられる二次性乳糖不耐症です。もともと哺乳類は乳児期には乳糖分解酵素の活性が高く、授乳期を過ぎると活性が低下して乳糖不耐となるのがふつうとされています。それにも関わらず乳糖不耐とならない人が多いのは、授乳期を過ぎても乳糖を摂り続けているために、乳糖耐性を持ち続けているのだろうという考え方もあります。民族や人種での差も明らかで、北ヨーロッパ人では乳糖不耐の割合が少なく、アジア人では95%が乳糖不耐だとも言われています。
 乳糖分解酵素は小腸から分泌され、これが少ないと乳糖が分解されないまま大腸に入るので、大腸内の浸透圧が上がって腸壁から水分が浸み出し下痢となります。また、腸内の細菌が乳糖を利用するために便が酸性となり、おなかが痛くなったり、腸がゴロゴロと鳴ったりすることもあります。乳糖分解酵素は小腸で分泌されるので、胃腸炎などで小腸が荒れると分泌が悪くなり、二次性乳糖不耐症を起こすと考えられています。このことは、もともと乳糖分解酵素の活性が低い日本人にとって、よくあることなのかもしれません。診断には便中のpHと糖を調べるクリニテストと呼ばれる検査がありましたが、現在は試薬の販売も中止されていて、検査が行われることはなくなりました。診断も兼ねて、乳糖を除去したミルクを飲ませ、乳製品を含んだ離乳食を中止して、下痢が改善するかどうかをみるのが一般的です。経過観察期間は1週間程度です。母乳も乳糖を含んでいるのですが、症状がよほどひどい場合を除いて、母乳を中止することはありません。

 ご相談のお子さんは生後6か月ですので、乳糖不耐症が原因で下痢になっている可能性が大きいとは言えないと思いますが、乳糖除去ミルクで改善しているのであれば、1週間くらいは続けてみるのがよいでしょう。下痢が改善したら、徐々にふつうのミルクに替えてください。離乳食は乳製品を使ったものは控え、すぐにでも再開してよいのではないかと考えます。離乳期にみられる下痢は原因がよくわからないことも多く、全身状態がよければ、長期の離乳食中断は好ましくありません。