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病気・予防接種

Q. BCG未接種の1歳児。いまからでも接種すべきでしょうか? (2019.10)

  • (妊娠週数・月齢)1歳0か月

子どもは早産の超低出生体重児で生まれましたが、無事退院でき、在宅で過ごしていました。1歳前から体調を崩し,再び入院することに。入院中状態が落ち着けば、予防接種を再開すると言われていたのですが、BCGができないまま1歳を過ぎてしまいました。小児科医師より「BCGは1歳過ぎたら予防接種してもあまり意味がないから、もう接種しなくてもよいと思う」と説明されました。本当に1歳を過ぎるとBCGは接種しなくてもよいのでしょうか。最近のBCGの予防接種の考え方では、それが標準になっているのでしょうか。

回答者: 横田俊一郎先生

 BCGは結核を予防するワクチンです。日本の結核は人口10万人あたりの年間患者発生件数が13程度で、この値が5を切っている米国や欧米に比べてかなり高い状態が続いています。BCGは予防接種法によって接種する対象が決められています。BCGの予防効果については、結核の発病を接種しなかった場合の1/4程度に抑える、結核性髄膜炎や粟粒結核などの小児の重症な結核の発病を予防する、一度接種すると効果は10~15年程度持続するなどが明らかになっています。

 従来BCGは4歳に達するまで行っていましたが、乳幼児の重症結核を予防することに主眼を置いて早期接種を目指すことになり、2005年から1歳未満で接種することになりました。当初は3~6か月を標準期間としていましたが、副反応を減らすことを目的に現在では5~8か月が標準期間となっています。接種率は100%に近く、成人の結核が米国の数倍あるのに、乳幼児の結核は米国の半分程度にとどまっているという実績があります。

 海外で結核の発生が少なくなった国の一部、例えば米国ではBCGを接種していません。全員に予防接種をするよりは、少ない結核を早く見つけて治療するという方針なのです。日本でもBCGを中止するという議論がないわけではありませんが、現在の状況で中止すると乳幼児の重症結核が増える可能性が高く、まだ踏み切れていない状態です。

 さて、1歳を過ぎてBCGを接種する意味があるかどうかという点ですが、重症結核が免疫力の弱い1歳未満の乳児に多いということを考えると、これらを予防するという観点からはBCGはあまり必要ではないかもしれません。しかし、感染した結核が発病しないようにする効果は十分期待できます。特に結核の多い地域に住んでいる、家族や周囲に結核に罹っている人がいる、というような場合には接種をしておくのがよいでしょう。

 逆に、周囲に結核がほとんどない状況であれば感染するリスクは大きくありませんので、BCGを受けずにいるのも一つの方法です。結核の感染が疑われる時にはツベルクリン反応や血液検査で診断し、抗結核薬で早く治療することになります。

 BCGは定期接種ですが、1歳を過ぎると任意接種となり費用がかかり、健康被害発生時の保証も定期接種とは異なってくるという点もご注意ください。ただし、長期にわたり療養を必要とする疾病にかかった子どもの場合、特別の事情があるために予防接種を受けられなかったと認定されれば、対象期間を過ぎても定期接種の対象者とみなすということが法律で決められています。ご相談のお子さんがこれに該当するかどうかはわかりませんが、接種するのであればかかりつけ医や自治体の予防接種担当者に尋ねてみるのがよいと思います。