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発育・発達

Q. 6か月未満の赤ちゃんの長時間フライトには、どんなリスクがあるでしょうか? (2020.2)

  • (妊娠週数・月齢)6か月

主人がオーストラリア出身で両親が高齢のため、子どもが生まれたらなるべく早くに会わせてあげたいと思っています。1か月健診で母子ともに異常がなく、搭乗日当日も赤ちゃんが健康であるという前提の場合、12時間ほどのフライトによる赤ちゃんへの医学的なリスクはあるのでしょうか。私の両親は、6か月未満の赤ちゃんが飛行機に乗ると難聴になる恐れがあると言って反対しています。私も夫も、リスクがあるなら無理していくつもりはありません。できるだけ早めに義両親に会わせてあげたいのですが、いつごろになったら安心して搭乗できるでしょうか?

回答者: 横田俊一郎先生

 航空会社によっても違うのですが、たとえばJAL、ANAは生後7日以内の新生児以外は飛行機の利用が認められています。乳児が搭乗する場合の問題点として考えられる主なものは以下の4つです。

1)安全な座席の確保
2)ぐずったときの対策
3)室内環境の変化(気圧、湿度・温度)
4)放射線被ばくの増加

 座席の確保については、保護者が抱っこして搭乗する方法と、別に座席を確保して子ども用携帯ベッドを使用する方法があります。ベッドがあるとお母さんは楽ですし、安全でもあります。航空会社によってはベビーベッドを貸し出していますので、搭乗する航空会社に問い合わせてみるのがよいと思います。大きなチャイルドシートやベビーカーは機内には持ち込めません。

 ぐずったときの対策ですが、添乗員がいろいろと面倒をみてくれると思います。それでも泣きやまず、シートベルト着用サインが消えているときには席を立ってあやす必要があるかもしれません。なるべく最前方か最後方に席を取り、座席も通路側にしておくと便利でしょう。おむつの替えも準備が必要です。

 次は最も気になる室内環境の変化です。高度1万メートル以上の機内の気圧は0.8気圧程度で、標高約2000メートルと同じ環境になります。空気中の酸素濃度も下がるのですが、呼吸器や心臓の大きな病気がなければ大きな問題は起こりません。問題は飛行機の発着時の急激な気圧の変化です。大人でも耳がおかしくなることが多いですが、これは「中耳腔」と呼ばれる中耳と鼓膜に囲まれた部屋の中の空気が急に膨張したり収縮したりして、鼓膜が引っ張られるために起こる症状です。中耳腔は耳管と呼ばれる管で鼻の奥とつながっています。ふだんはこの管は閉じて中耳腔は孤立していますが、アクビをしたり「耳抜き」をしたりすると管が開くので、それによって中耳腔の圧が外気と同じになり鼓膜が引っ張られる症状が改善するのです。

 赤ちゃんでも同じことが起こって耳を痛がることがありますが、母乳や哺乳びんでミルクを飲むときに耳管が開くので、ちょうど耳抜きをしたのと同じ状態になります。赤ちゃんの耳管は成人に比べると太くて短いので、気圧の変化だけでひどい中耳炎になることはまずありません。飲むものを準備しておけば大きな問題は起こらないと思います。また、機内はかなり乾燥して、時には寒くなることもありますので、毛布などの準備があると安心です。

 もう一つ、放射線被ばくの問題があります。高い高度では、大気による宇宙線の拡散が減るので、宇宙線による放射線が多くなります。高度1万メートルでは放射線の量は約6倍になると書かれていますが、飛行機内ではもっと低い値になっていると思われます。また、私たちは日常の生活でいろいろなものから放射線を浴びていて、その中で宇宙線による放射線の占める割合はわずかです。したがって、1回の飛行による放射線量の増加は、人体に対する影響という点であまり問題になりません。赤ちゃんは成人よりは放射線による影響を受けやすいと考えられていますが、1回の飛行だけではそれほど重大な影響を及ぼさないと考えてよいでしょう。

 以上、乳児が搭乗する場合の問題点を説明してきました。大きな問題点とは言えませんが、まったく問題がないというわけでもありません。祖父母に会いに行く、里帰りから自宅へ戻る、冠婚葬祭など大事な用事があるときには、飛行機を利用することを躊躇しなくてよいと思います。単なる家族旅行のように不要不急の飛行機利用なら、早くても生後半年を過ぎてからにするのがよいと思います。