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病気・予防接種

Q. コロナ禍で保育園に預けるのを躊躇しています。 (2021.10)

新型コロナウイルスのデルタ株による小児の入院が増えていると聞き、子どもを保育園に預けることを躊躇しています。家計のためにも、職場復帰をしたいと考えていたものの、いまのこの状況下での復帰となると、決められずにいます。今後も、変異株の出現が予想されていると聞くので、不安が尽きず、先の見通しもないので、予定を立てられずにいます。この状況をどのように捉えて、子育てをしていけばよいのでしょうか? 難しい問題だとは思いますが、先生の見解をぜひお伺いしたです。

回答者: 横田俊一郎先生

 新型コロナウイルスの流行が続き、健康面だけでなく、生活のさまざまな局面で影響が出てきています。まずは現状をよく知り、正しく恐れることが何よりも大切だと思います。正確なデータにアクセスし、それを基に考えなくてはなりません。

 まずは、子どもの感染者数についてです。国内の発生動向については、厚生労働省が日々データを更新しています。令和3年9月28日の国内の累積陽性者数は全体が1,682,209人、10歳未満は90,015人で割合として全体の5.35%です。これを第4波の最中である5月12日のデータと比べてみると、このときは10歳未満の割合は3.12%だったことがわかります。デルタ株による第5波で感染者が大幅に増えているので、子どもの感染者も増えてはいますが、とくに子どもだけが増えているわけではなく、大人に比べると感染者の割合が少ないということに大きな変化はありません。
 https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html

 次に子どもが誰から感染するかについての調査を見てみます。日本小児科学会では、2020年2月1日~2021年6月30日に報告された症例と、2021年7月1日~8月17日に報告された症例とを検討し報告しています。これによるとどちらも家族内感染が70%と大半を占めています。幼稚園・保育園での感染は6%から9%と増えていますが、その内訳を評価すると一番多いのは保育士などの成人からの感染です。子ども同士の感染は、28.2%から38.7%へ増加していますが、統計学的には有意差は認められませんでした。すなわち、デルタ株に変わっても、「子どもから子どもへは感染しにくい」という状況は変わっていないのです。
 http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20210830covid19chukan_houkoku.pdf

 最後に、子どもの新型コロナ感染症患者の重症度について考えてみます。子どもではほとんど重症化しないことはよく知られています。日本小児科学会が公開している「データベースを用いた国内発症小児Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」に基づいた早期公開情報をみても、入院している割合は多いものの、大部分は無治療で回復していることがわかります。また、厚生労働省が出している「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 第5.3版」でも、「日本の 20 歳未満の COVID-19 患者 180,650 例での死亡例の報告はなく,入院患者 12,201 例では,重症1例の報告があった(2021年 8月 25日現在) 」と書かれています。

 以上のことから考えれば、保育園へ入園する必要があるのに、それを無理にやめる理由はありません。もちろん適切な感染防止対策を取ること、周囲に新型コロナの患者さんが出たときには注意して生活することは必要ですが、子どもを入園させることに躊躇することはないと思います。