赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバー病気・予防接種

病気・予防接種

Q. 8か月の娘。ときどきじんましんが出ます。 (2021.11)

  • (妊娠週数・月齢)8か月

娘は8か月、離乳食2回食を実施中なのですが、ときどき謎のじんましんが体に出ます。今日も市販のベビーそうめんを食べさせたら出ました。いままで、うどんやパンがゆを食べさせても大丈夫でしたし、そうめんを食べたときに毎回じんましんが出るわけでもありません。食物アレルギーだと、まず口まわりに症状が出ると思うのですが、いつも顔は綺麗で、脇周辺や太もも、おなかなどに出ます。食物アレルギーでこうしたじんましんの症状の出方もありますか? またここ1週間ほど、1日5〜6回、おむつを変えるたびに少量の軟便をしているのも気になります。下痢でもなく色も正常ですが、毎回なのでおむつかぶれもひどく、不安になります。ただし、本人はいたって元気で機嫌も悪くありません。こうした軟便は、このころの赤ちゃんにはよくあることでしょうか? 軟便も食物アレルギーの症状の可能性はありますか?

回答者: 横田俊一郎先生

 日本皮膚科学会の蕁麻疹診療ガイドラインには、じんましんは「膨疹,すなわち紅斑を伴う一過性,限局性の浮腫が病的に出没する疾患であり,多くは痒みを伴う」と定義されています。すなわち、皮膚の一部が赤く盛り上がって、出たり消えたりして、かゆみのあることが多い発疹のことを指しています。

 じんましんは、皮膚にあるマスト細胞(化学伝達物質をたくさん持っている細胞)が何らかの原因で活性化し、皮膚組織にヒスタミンなどの化学伝達物質を放出するようになることから始まります。その結果、皮膚の小さな血管に作用して血管を拡張させたり、血液の血漿成分を血管外へ漏れさせたりすることによって、膨疹が出現しかゆくなるわけです。

 マスト細胞が活性化する機序としては、即時型アレルギーとも呼ばれる免疫反応であるI 型アレルギーが関係していることがよく知られています。しかし、じんましんの場合には原因となるI 型アレルギーの抗原を特定できることは多くありません。一方、I 型アレルギー以外に、機械的に擦れるなどの物理的刺激や薬剤、運動、体温上昇などに対する過敏性が原因のこともあります。患者さんそれぞれで原因は異なっていて、これらの機序のいずれか、または複数の因子が複合的に関与していると考えられています。

 食物アレルギーが原因でじんましんが起こることもあるのですが、食物アレルギーだけが原因の場合には、同じ食べ物で毎回じんましんが出る、食べた後数分から1~2時間の間に出るというのが大きな特徴です。また、全身に出てかゆみが強いことが多いです。
じんましんというとすぐに原因として食べ物が思い浮かぶのですが、最も多いのは「特発性」と呼ばれる原因のわからないじんましんなのです。子どもでは、かぜや胃腸炎などの感染症、辛い食べ物など、年長児では疲労やストレスが引き金となることがあります。外来で診療をしていると、毎年春秋の季節の変わり目にじんましんで受診する子どもが多いことに気づきます。このように原因を特定できないことが多いので、一般のアレルギー検査をしても何も見つからないことがほとんどで、ガイドラインでもむやみに検査をしない方がよいと述べられています。

 ご相談の赤ちゃんは下痢をしているということなので、何らかの体調の変化があり、それがじんましんの誘因となっている可能性もあるかもしれません。離乳期の赤ちゃんが下痢になってしばらく続くことは、よくある出来事です。赤ちゃんが元気で、食欲が落ちたり体重が減ったりしていなければ、食事の量を少し減らすなどして様子を見れば、大部分は自然に治るでしょう。人工栄養なら、ミルクの量を少し減らしてみるのもよいかもしれません。状況からはアレルギーが原因で下痢をしているとは考えにくいと思います。

 いずれにしても、じんましんが続くようなら小児科を受診して抗アレルギー薬を処方してもらうのがよいと思います。一定期間薬を服用すると、乳幼児のじんましんは大部分が改善します。時に再発したり慢性化したりすることもありますが、そのときはかかりつけ医と相談すれば大丈夫です。

 食事についてはいままで通り続けてみてください。じんましんは食事の後や入浴後に出ることが多いものです。繰り返す場合には、食べたものを記録して原因を再検討することも必要ですが、基本的には食物アレルギーとは関係ないことが大部分で、一過性で短期間に改善することが多いことを覚えておいてください。