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病気・予防接種

Q. 2か月の子。母乳性黄疸といわれています。 (2021.11)

  • (妊娠週数・月齢)2か月

完全母乳で育てている生後2か月の赤ちゃんがいます。生後3日目に黄疸の数値が高く光線療法を行いましたが、それ以降もずっと肌、眼球の黄疸が続いており、母乳性黄疸だろうといわれ経過観察していました。便はスケール4から5で、尿はほんの少し黄色いくらいです。その後、2か月健診でも続いていたので採血検査を行ったのですが、T-Bilが11.3、D-Bilが0.7、LD348、AST76、ALT58、γ-GT97、アミラーゼ17でした。肝機能が悪いかどうかは不明で、遷延性母乳性黄疸だろうと言われ、様子を見ています。このまま様子を見ていて大丈夫なのでしょうか? 他の病気の可能性はありますか?

回答者: 板橋家頭夫先生

 ご質問のなかでは妊娠中の情報やお子さんの哺乳力や体重増加の状態、母子の血液型などの情報が触れられていませんが、これらには問題がないと仮定してお答えしたいと思います。

 生後3日目に光線療法が実施されていたようですが、その後黄疸の増悪はないようですので、典型的な血液型不適合や乳汁摂取量不足による可能性は低いと考えられます。しかし、生後2か月の現在も黄疸が持続しているようですね。総ビリルビンが11.3mg/dlで直接ビリルビン0.7mg/dlと低く、間接ビリルビンが主体の黄疸が持続していると判断されます。さらに母子健康手帳の便色スケールが4~5の範囲にあり尿の色も問題はないとのことから、緊急の診断・手術が必要な胆道閉鎖症による胆汁うっ滞症を疑わせる所見は乏しいと思われます。また、肝機能は極端な異常はないと思われます。

 お子さんは遷延性母乳性黄疸の可能性が高いことが指摘されているようですが、これを診断するためには、他の疾患の可能性を否定しておくことが必要になります。遷延性母乳性黄疸の原因は、溶血(赤血球が壊れること)と溶血以外に大別されます。血液型不適合がないとすると、前者の代表的な疾患は頭血腫や遺伝性球状赤血球症が挙げられます。頭血腫はお子さんの頭部の血腫の有無により判断できますし、後者は血液検査で赤血球の形を観察することで診断は容易です。溶血以外では、先天性甲状腺機能低下症やガラクトース血症、消化管狭窄・閉鎖、肥厚性幽門狭窄症がありますが、代謝スクリーニング検査の異常がなかったり、頻回の嘔吐や体重増加不良がないのであれば、これらの疾患は否定的です。

 黄疸の色素であるビリルビンは、主に赤血球に由来しており、当初ビリルビンは水に溶けにくい状態(間接ビリルビン)で肝臓に運ばれ水溶性のビリルビン(直接ビリルビン)となり胆汁とともに腸管内に排泄されます。肝臓内で直接ビリルビンにするうえで必要な酵素であるビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子(UGT1A1)の変異があったり、赤血球の機能を維持するために必要なグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)異常があると間接ビリルビンが高値となりますが比較的まれな疾患です。一般には総ビリルビンが12mg/dl未満であればさらなる検査は必要でないといわれていますので、今後のビリルビン値の推移をまず観察することが必要でしょう。もし、再び増加していくのであれば小児科医にご相談ください。