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発育・発達

Q. 向きぐせがある6か月の娘。口蓋の歪みが心配です。 (2022.6)

  • (妊娠週数・月齢)7か月

もうすぐ7か月になる娘を育てています。向きぐせがあって、左ばかり向いて寝ており、頭の形、口蓋に左右差があります。頭の形については5か月のときに専門の先生に診察していただいたのですが、すごくひどい頭の形でもないし、右に向くように背中にタオルなど敷いたりして様子を見て、もし、それでもダメなら再度受診してくださいと言われています。実は私は娘の口蓋の歪みが一番心配で、歯科を受診しましたが様子見となりました。何かできることはないのでしょうか? 口蓋が歪んでいると食べる機能の発達などに影響があったりしますか。

回答者: 井上美津子先生

 睡眠中の姿勢のくせは「睡眠態癖」と呼ばれていて、うつぶせ寝や横向き寝(右向き寝、左向き寝)が常態化すると、成人でも時にはあごや歯並びの変形などを引き起こすことがあると報告されています。とくにうつぶせ寝の場合には、首を横に曲げないと呼吸しづらいため、背骨のねじれを引き起こして肩や腰にも影響したり、あごが押されて顎関節に負担がかかることもあるようです。

 赤ちゃんの場合には、睡眠時間が長いことや頭の骨の構造からも、睡眠時の向きぐせが頭部やあごの形に影響する可能性がより高くなります。ヒトの頭の骨はいくつかのパーツに分かれていますが、乳児期にはそれらの骨と骨の間に隙間があります。この隙間のある構造によって、出産時に赤ちゃんの頭部が産道を通りやすくなり、また乳児期に急速に増大する脳の成長に対応できるのです(脳の成長によって内部から圧力が加わると、隙間が広がって頭部が大きくなり、隙間に新しい骨が徐々に新生されます)。同時にこの時期の頭部の骨は、付着している筋肉の動きや睡眠態癖などによる外的圧力によっても、変形が起こりやすいものと考えられます。

 乳児期には、頭部に一定方向からの持続的な力が加わる状態は、できるだけ避けたいものです。とくに乳児期前半は、目が覚めていても寝ている体勢をとっている時間が長いため、向きぐせなどによる影響が出やすくなります。ただし、乳児期も後半になって座位がとれるようになると、起きている間は頭部やあごへの負担も軽減されてくるものと考えられます。5か月のときに診断していただいた専門医のアドバイスのように、寝るときの体勢が左向きばかりにならないよう工夫しながら様子を見るという対応で、いまのところはよろしいかと思います。

 また、口蓋の左右差が食べる機能の発達に影響しないかご心配ということですが、離乳の初期食~中期食のうちは主に口唇や舌の動きで食べることができるため、口蓋の形態の影響は少ないものと考えられます。まずは、口唇で食べ物を取り込んだり、舌でつぶしたりする食べ方をしっかり覚えてもらいましょう。

 後期食になって、前歯で食べ物を噛みとったり、奥の歯ぐきで噛みつぶしたりするようになると、上下のあごの関係が食べ方に影響してくる場合もあります。さらに、1歳を過ぎて乳歯の奥歯が生えて、上下の奥歯が噛み合うようになると、口蓋の歪みの影響がはっきりしてくることも考えられます。それまでの間に、寝るときの頭の向きや姿勢を調整して、頭部やあごの歪みの改善を図っていく必要があるでしょう。また、起きて活動しているときには、いろいろな姿勢で動いたり遊んだりできるようにしてあげることも大切でしょう。離乳食は、子どもの乳歯の生え方や口の動きなどを見ながら、あせらず食形態のステップアップをしていき、手づかみ食べなどで自分で食べる意欲も育ててあげてください。乳歯の奥歯が生えてきて噛み合わせに心配があれば、また歯科(できれば小児歯科専門のところ)で相談してみてください。

 なお、頭の形に関しては、著しい変形に対して乳児期に頭蓋矯正治療を行うという対応も出てきているようですが、歯科の方で乳児の口蓋の変形などに対しての顎矯正は、口唇口蓋裂などの特別なケースを除いては行われていません。