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発育・発達

Q. 7か月半の男の子。誕生時から足を突っ張ります。 (2022.8)

  • (妊娠週数・月齢)7か月

7か月半の男の子です。生まれたときから足をピンと突っ張っています。抱っこを嫌がったりすることはなく、日常生活でとくに問題はありませんが、すごく力が強いのが気になります。足を曲げてほしいときも力を入れて、曲げないようにすることも多々あります。両足に力を入れ、いつも足をすりあわせていて左足側面にタコができるほどです。足の指の皮もむけており、痛々しいです。病院に連れていった方がよいでしょうか。

回答者: 横田俊一郎先生

 足をよく突っ張るお子さんもときどきみかけ、脳性まひではないかという質問を受けることがあります。7か月半のお子さんなのでお座りができるころですが、足を突っ張るためにお座りもできないというのであれば少し心配です。ご質問のお子さんは「日常生活でとくに問題はありません」ということなので、脳性まひを心配するような状態ではなさそうに思います。

 筋肉の緊張状態の程度を見るときには、手足を振ってみたときにどのくらい動きやすいか、関節を曲げるときにどのくらい抵抗があるか、筋肉を触ったときにどのくらい硬く筋肉を触れるか、というような要素を考えて判断します。これらから総合的に判断した筋肉の緊張状態を、医学用語では「筋トーヌス」という言葉を使います。一般的に「身体が硬い」と表現される状態は、「筋トーヌスの亢進」と呼ばれます。

 筋トーヌス亢進の原因の代表的な病気は脳性まひです。脳性まひとは、「お母さんのおなかの中にいるときから新生児期までの何らかの脳の障害によって起こった、一生涯続く姿勢や運動の障害」のことを言います。原因は母親の体内での感染症や脳の血管異常、出産時の重症仮死、早産で生まれてきたことが原因で起こる頭蓋内出血やそれに伴った脳の後遺症、出生後の髄膜炎や脳炎などが主なもので、脳性まひのお子さんはこのようなリスクをもっていることがほとんどです。

 脳性まひで背筋のトーヌスが亢進していると、引き起こしたときに身体が反ってしまう、支えて座らせようとしても上体が反って座れないということがあります。また、足を床につけてピョンピョンさせると、足が突っ張って両足が交差してしまう、という現象もよく見られます。また、脳性まひがあると単に手足が硬く体を反らせるだけではなく、首のすわりが遅い、興奮・緊張時に異常な姿勢をとる、表情が乏しいなどの症状が見られます。ご質問のお子さんにはこのようなことは当てはまりそうにありません。

 乳児期早期の子どもは身体を前に曲げる機能よりも後ろへ伸ばす機能が先に発達します。そのため筋緊張が強くなりやすい赤ちゃんだと背筋が勝って弓反りになったり、下肢がピンと伸びたりするようになります。このような子はうつ伏せにしておくと少し緊張が和らいで落ち着くこともあり、正常な発達のバリエーションと考えられます。また、赤ちゃんは気持ちが緊張すると筋緊張も強まりますので、おむつ替えのときなどに困るようであれば、なるべくリラックスさせる方法を考えるのがよいかもしれません。

 足をピンと突っ張るという心配はかなりあってインターネット上にも質問がたくさん投稿されていますが、ほとんどは成長の過程で改善していきます。心配の強いときにはかかりつけの小児科に相談するのが一番です。しかし、脳性まひのリスクがないのであれば、あまり心配せず成長を見守るのがよいと思います。