病気・予防接種
Q. 1歳1か月の娘への新型コロナワクチン接種を迷っています。 (2022.12)
- (妊娠週数・月齢)1歳1か月
1歳1か月になる女の子を育てています。2022年10月末から乳幼児(6か月~4歳)も新型コロナのワクチンが接種できるようになったと聞きました。娘が新型コロナに感染した際、軽症で済むとは限りませんし、重症化したら命の危険や今後なにか障害等が残る可能性もあると考えると接種させたいと思います。ただ、ワクチンに長期的なリスクがあるのではないかという声や、ワクチンの後遺症のニュースなどを見ると、娘にワクチン接種をさせるべきかどうかの迷いも生じます。医師の視点で、メリットやリスクについて教えていただきたいです。
回答者: 横田俊一郎先生
乳幼児(6か月~4歳)への新型コロナワクチン接種が2022年10月末から始まりました。国が決定した予防接種ですので、予防接種法上の「接種勧奨」及び「努力義務」の規定は原則として適用されることとなっています。しかし、強制ではなく、保護者の判断に基づいて接種を決めるのが前提です。
ワクチンの接種を判断するときには、防ぐべき病気の重さ、ワクチンの予防効果、ワクチンの副反応について考えてみることが必要です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度を見てみると、乳幼児は高齢者と比較して重症化することはかなり少ないです。しかし、2歳未満では比較的重くなる傾向があり、熱性けいれんが多いことも指摘されています。また、感染者が増えるにつれて、心筋炎や心膜炎、脳症などを起こして重症化する子どもがいることも報告されるようになっています。おそらく、インフルエンザと同じくらいの確率で重症化することがあるのではないかと思われます。
効果については、日本での状況はわかりませんが、日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会の発表では、「オミクロン株BA.2流行期における発症予防効果について生後6か月~23か月児で75.8%、2~4歳児で71.8%と報告されていて、流行株によっては有効性が低下する可能性はあるものの、重症化予防効果は発症予防効果を上回ることが期待される」と書かれています。海外の使用経験からは、それなりの効果があると言えます。
副反応についても、日本での経験はまだありませんが、海外での治験や米国での調査で重篤なものはまれと報告されています。ネット上には憶測などからさまざまな副作用や長期的な問題に関する記載がありますが、根拠のないものが大部分です。また、乳幼児の予防接種は日本では皮下注射が大部分ですが、新型コロナワクチンは筋肉注射で接種することになっています。少し不安かもしれませんが、海外では一般的な予防接種もほとんどが筋肉注射で行われていて心配はありません。
このような状況から、日本小児科学会では「生後6か月以上5歳未満のすべての小児に新型コロナワクチン接種を推奨します」と声明を出しています。もともと病気を持っていて重症化しやすい子どもは当然ですが、それ以外の健康な子どもにも接種を勧めるということです。子どもが罹患すると集団生活を休むことになり、家族もそれに伴って仕事や学校を休まなければならなくなるという問題もあります。窮屈になっている日常生活を少しでも従来の生活に戻すためにも、ワクチンは役に立つはずですし、それ以外に打つ手がないというのが今の状況です。
新しいワクチンに対する不安はあるでしょうが、厚生労働省や日本小児科学会が公開しているコメントをしっかり読み、またかかりつけの小児科医にも相談して、前向きに接種を考えていただきたいと思います。
新型コロナワクチンQ&A (厚労省)
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/infant/
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_inf-chd.html
生後6か月以上5歳未満の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方(日本小児科学会)
https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=466 (病気・予防接種)