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発育・発達

Q. 1歳半健診で、低身長かもしれないと言われました。 (2024.3)

  • (妊娠週数・月齢)1歳7か月

1歳10か月の娘の身長が心配です。出生時は体重2,670g、身長48㎝で小柄ではありましたが、その後1歳半ごろまでは、母子健康手帳にある発育曲線のグラフの帯の下の方ではありながら、曲線内には収まっていました。ところが、1歳10か月に保育園での計測で76.5㎝と、母子健康手帳の発育曲線のグラフの帯を下回ってしまいました。1歳半健診の際に「低身長かもしれない」と言われ、それ以来、食事、運動、睡眠には気をつけてきたつもりです。両親の身長は父174㎝、母163㎝と低いほうではありません。娘に疾患などはなく、発達などもどちらかというと早いように思いますが、身長だけが心配です。調べると、原因に遺伝子の異常や成長障害などが出てきて、とても不安です。低身長とはどういう状態を言うのでしょうか? いま、子どもにしてあげられることはありますか?

回答者: 横田俊一郎先生

 低身長は、同年齢の標準値より標準偏差の2倍以上下回っている(-2SD以下)場合と定義されています。母子健康手帳の発育曲線のグラフの下の線は3パーセンタイルと呼ばれ、100人の同年齢の子どもを集めたときに、下から3番目に低い子どもの身長を表しています。-2SDは2.3パーセンタイルくらいに相当するので、3パーセンタイルの線を下回ったからといって、すぐに低身長の定義に当てはまるとはいえません。低身長を乳幼児期に診断する目的は、身長の低下を最初の症状として発病する重大な病気を早く見つけることや、ホルモンの病気など治療可能な病気を見逃さないことが中心となります。
 ご相談の女の子について1歳10か月で76.5cmは、確かに-2SDを下回っているので低身長の定義に当てはまります。ただ、身長はおそらく臥位で測っていると思われますので、数cmの誤差が生じる可能性があります。繰り返し測定することも時に大切です。重要なのは身長の時間的な経過です。生まれた時から-2SD付近でずっと経過してきたのであれば、緊急性のある重大な病気の可能性は少ないと言えます。脳腫瘍などのために成長ホルモンが急に出なくなるような場合には、あるときから急に身長が伸びなくなるということが大きなポイントです。また、虐待を受けた子どもでも同じようなことがあるので、小児医療の関係者は低身長の原因として気にかけています。
 身長が長期間かなり低いまま(-2SDを大きく下回る)というときには、成長ホルモンの分泌不全や甲状腺ホルモンの低下が原因のこともあります。これらについては、成長のことを専門的に診療している「小児内分泌」の外来を受診すれば、検査によって診断できます。かかりつけ医から地域の総合病院などを紹介していただくのがよいでしょう。
 また、ターナー症候群という生まれつきX染色体が1本少ない病気では、低身長がきっかけで病気が見つかることがときどきあります。女児に起こる病気で、低身長以外にもいくつかの症状が知られていますので、総合的に見て疑いがあると考えられれば染色体の検査を行うことになります。
 低身長の原因はわからないことも多く、体質性、あるいは家族性などと言われることが多いです。ご両親の身長から最終身長を予測する計算式もあり、インターネット上に公開されています。ご相談のお子さんは確かに現在の身長は低いですが、ご両親の身長が高いので、何も原因となる病気がないのであれば、成長に伴って伸びていく可能性も十分あると思います。
 食事、運動、睡眠など日常生活が整っていることはもちろん大切なのですが、これらが良いと身長が伸びるという確かな証拠はありません。牛乳をたくさん飲むと身長が伸びる・・・などと言われることもありますが、これも関係ないことがわかっています。極端に身長が低かったり、急に身長の伸びが落ちたりしたときには早めの検査が必要ですが、それ以外の場合にはまず定期的に身長を測定して成長曲線に記録して経過を見ていくしかありません。どうしても心配なときには、まずかかりつけ医に相談してみてください。