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病気・予防接種

Q. 3歳児。高熱時に何度も意識消失があり、心配です。 (2024.4)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳直前に初めてインフルエンザとアデノウイルスに感染して、40度近い熱を出しました。インフルエンザのときは、1秒弱脱力してひっくり返りそうになり、すぐに意識が戻る、ということが同じ日に3回ほどありました。アデノウイルスのときは2回ほど同じような脱力があり、1時間後に30秒くらいのけいれんを起こしました。病院で脳波検査をすると、入眠前に1秒ほどてんかん波のような異常脳波が認められたそうです。しかし「これだけでは、てんかんと診断できない」と言われ、半年後に再検査を受けることになりました。
熱性けいれんまたは熱性失神のようなことを経験する子どもは、てんかんでなくても、脳波検査でてんかん波が認められることはあるのでしょうか。てんかん波が少しでも認められたということは、今後てんかんを発症する可能性があるのでしょうか。また、この症状が「脱力発作」だとしたら、脳全般の異常で、知的障害にもつながるのでしょうか。治る確率なども知りたいです。

回答者: 横田俊一郎先生

 熱性けいれんは子どもの5〜10%程度に見られるよくある病気で、その約3分の1は生涯で2回以上のけいれん発作があり周囲の人を心配させます。
 日本小児神経学会が監修している『熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン』が熱性けいれんの診療基準となっていて、2023年に改訂版が出されました。新しいガイドラインでは、熱性けいれんという言葉が、運動発作であるけいれんに限られているような誤解を招きがちなので、それ以外の発作も含む「熱性発作」とするのが望ましいと書かれています。ご質問のお子さんは、脱力してひっくり返りそうになる発作を起こしていますが、この解説から判断するとこれも熱性発作と考えてよさそうです。
 ただ、1回の発熱の中で複数回の発作が見られていますので、熱性けいれんの中でも「複雑型熱性けいれん」に入ると考えられます。そして、問題は熱性けいれん後のてんかん発症についてです。ガイドラインではてんかん発症に関連した因子として、以下の4つをあげています。
1)発達・神経学的異常
2)てんかん家族歴(両親・同胞)
3)複雑型熱性けいれん
4)短時間の発熱-発作間隔
5)3歳以降の熱性けいれん発症
 ご相談のお子さんは「3)複雑型熱性けいれん」があることは確かですが、ほかの因子についてはご相談の内容だけからですとはっきりしません。しかし、3歳近くになって初めて熱性けいれんがあったということは、リスクの一つと考えることができるかもしれません。
 これらの因子について、いずれの因子も認めない場合のてんかん発症は1%、1因子のみの場合は2%、2〜3因子を認める場合は10%と記載されています。つまり、2つ以上の因子があっても90%はてんかんを発症しないということを知っておくことがまず大切です。また、頻回の熱性発作の直接的な結果として、てんかんが発症するわけではないということが、ガイドラインでは強調されています。つまり、熱性発作を経験する子どもの一部に、もともとてんかん素因をもっている子どもがいると考えられているのです。
 脳波検査で「入眠前に1秒ほどてんかん波のような異常脳波が認められた」ということの意味については、簡単に判断するのは難しいと思います。やはり、半年後に再検してみるしかないのでしょう。何よりもてんかん発作は起こっていないので、急ぐ必要はありません。よく知られた特徴的な脳波を示すものでは脳波から診断がつけられることもありますが、これ以外では無熱性の発作が少なくとも2回以上起こって初めててんかんと診断します。
 発熱時に起こった瞬間的な脱力がてんかん発作である可能性については、小児慢性特定疾病に指定されている「ミオクロニー脱力発作を伴うてんかん」という病気があり、これを心配されているのかと思われます。しかし、発作が起こっている状況、脳波に特徴的な異常が見られていないことなどから否定的と思われます。発達の異常を伴うようなてんかんの発作である可能性も低いと考えられますが、詳しいことは担当の小児神経専門医から説明してもらうことが必要だと思います。