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子どものこころを育てる 4

かんしゃくもちでわがまま、これが「気質」ですか?
ずっとこのままなのでしょうか?

赤ちゃんの気質には、
大きく分けて3つのタイプがあります。

 「持って生まれた気質」などと言われると、「じゃあ一生このままなのかしら?」「それこそ三つ子のたましい百まででは?」と思ってしまいます。 確かに気質は、子どもの持って生まれてくる性質ではありますが、まわりの人とのやり取りの中であらわれるものであり、しかも変わる可能性を持ったものでもあるのです。
 この「気質の変化」を研究した有名なものに、ニューヨークの、トーマスとチェスという二人の精神科医が行った調査があります。
 彼らは、生後間もなくから16、17歳にいたるまで、それぞれ100人あまりの数グループの子どもを追跡調査しました。そして、赤ちゃんたちを気質からいって大きく3つのグループに分けることができるとしたのです。
 第1は「扱いやすいタイプ」です。およそ40%の赤ちゃんが該当しました。比較的いつもきげんがよくて、きげんをそこねても、あやすとすぐに気持ちを変えることのできるタイプです。生活リズムも安定していて、いわゆる「育てやすい」赤ちゃんです。
 第2は「扱いにくいタイプ」でおよそ10%の赤ちゃんです。気難しくて、きげんをそこねやすく、一度きげんをそこねるとなかなか回復しません。あるいは、新しい状況に慣れるのに、時間がかかります。生活リズムも不安定という特徴もあります。
 第3のタイプは15%ほどで、それほど育てにくくはないのですが、とにかくいろいろな行動に取りかかったり、気持ちを決めるのに時間がかかります。
 残りの35%は、こうした気質をあわせ持っている、とされました。……あなたのお子さんはどのタイプでしょう?

気質はこのまま?
いいえ、これも変化していく可能性を秘めています

 さてこうした気質を持った子たちが、その後、どうなったでしょう。トーマスたちは青年期まで追跡調査したのですが、その結果はとても興味深いものでした。
 というのは、それぞれのタイプの赤ちゃんたちが、ずっとそのままの性質を持ちつづけるわけではないことが、わかったのです。
 たとえば第2の「扱いにくいタイプ」も、養育者の接し方によっては、それが変わりました。反対に、「扱いやすいタイプ」の子でも、その性質を大切に受け止める人がいなかったりした場合には、扱いにくいタイプに変わることもわかりました。
 つまり、赤ちゃんの気質は養育者に自分の気質に合った扱いを要求はしますが、その受け止められ方によって、変わる可能性もあるということです。それは、たとえてみれば親と子のキャッチボール。赤ちゃんが要求し、養育者が応える、それに赤ちゃんが反応する。このやり取りの中で、子どもは成長します。
 人間の発達は、実にしなやかで、したたかです。生まれつきの気質はあっても、生まれた後のまわりの人々とのふれあいや交渉、おかれた環境によって、その子なりの変化を遂げていくわけです。
 子どもに、かかわりを持つ人の種類や数、あるいは生活する場所や経験の広がりは、3歳より4歳、4歳より5歳と、成長するにつれ豊かになります。なにより、人間には入ってくる情報を処理する力、つまり体験を自分のものとして消化したり、記憶する力が備わっています。しかもこの能力は、成長につれてますます伸びます。
 誕生から3歳までの発達には確かに目を見張るものがありますが、発達はそこで終わるわけではありません。つまり「3歳までに」とか「3歳では遅すぎる」などと心配しなくてだいじょうぶなのです。変化していくわが子をみつめながら、子育てを楽しむことが大切なのです。

持って生まれた気質も
まわりの人との触れあいで変化します。

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