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子どものこころを育てる 5

「人は一生成長しつづける」というのはわかります。
でも、物事にはやはり「覚えどき」があるのでは?

赤ちゃん時代だけでなく
人の一生は「いつでも」が大事な時期

 「人は一生成長する」って、すてきなことです。いまは「生涯発達」という考え方がひろまっています。人間は一生を通して発達する可能性があります。人生80年時代には、こうした視点が大切でしょう。
 ためしに、お母さん、お父さんも、自分のこれまでを振り返ってみてください。あなた自身の転機や変化のきっかけになった人との出会いや出来事など、いくつか思い出すことができるでしょう。それは学生時代だったり、社会人になってからのことだったりもするはずです。
 幼児期だけでなく、長い時間をかけて発達、つまり変化してきたのが「いまの自分」と言えるのではないでしょうか。
 また、衰える一方と思われていた中高年の人たちが、より豊かな人生に向けて自分を変える努力をしたり、挑戦している姿も、思い浮かべることができるでしょう。もちろん赤ちゃん時代は大切ですが、特にこの時期だけが大切というわけではなく、一生のどの時期も、その人の発達にとって、人生にとって、重要だと言えるでしょう。

「やりたいとき」「本気になれるとき」が
発達の適時です

 一方で、「やはり発達には適時があるのでは?」という疑問も残ります。「3歳までに覚えたほうがいいことがあるのでは」という思いです。あるいは「この時期を逃したら、もう一生ダメなのではないか」という不安です。
 「幼稚園に入るまでに○○しておかなければ」「小学校に入るまでに○○をマスターしておかなければ」とあせるお母さんもいるでしょう。
 でも、人間の発達を「80年の生涯」という長い時期の中で見ると、何かを習得するために、この時期でなければ絶対にダメなどということはない、ということもわかると思います。結論から言えば、「やりたいときが適時」なのです。
 実際、その人が本気になって何かに取り組んだときは、すごい力が発揮されます。
 それでほとんどの学習は、うまくいきます。それはお母さん、お父さんも経験があるのではないでしょうか。人間の発達では、時期ではなく本人の「やる気」がもっとも重視される必要があります。そしてその本気になる時期は、人によって違うということです。
 10代の本気、20代の本気、さらに40代、60代の本気……人間はいつでも学べるし、発達できるのです。

子どもは自分で納得しながら
育っていきます

 「生涯発達」という考え方は、このように「いつ、どういう面で発達するのかは自分が選ぶ」という発想です。それは自分の人生を自分で選ぶという「自立」にもつながる視点です。 たとえ親であっても、子どもの80年の人生を見通して「この道が最善」と言えるものではありません。一生を通じて、そのつど本人が最善だと考えるものを選んでいくのです。
 つまり、子どもは、親や学校が発達させるものではなくて、自分で納得しながら発達していくのです。
 それは赤ちゃんでも幼児でも同じです。人はその人なりのやり方、ペースで発達します。親に必要なのは、可能なかぎりよい環境を準備したり、子どもの歩みを見守り、支えてあげることです。80年にわたって発達するのだと考えてみると、乳幼児期にできるかぎりたくさん覚えてなどと、あせるのはおかしい……と思えてきませんか?
 多くのお母さんやお父さんは、子どもが幸せであるように、その個性を最大限に伸ばせるようにと考えていることでしょう。それはそれで、とても大切なことです。けれど、子どもの成長についての責任をすべて親がとれるものではないのです。いくら親がやっきになっても、子どもが望まなかったり、納得しなければ、成長しません。

実態に合っていないにもかかわらず
「3歳では遅すぎる」と公言する人が、
あとを絶ちません。どうかまどわされないでください。

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