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子どものこころを育てる 12

母親が外で働くことは、
子どもにどんな影響を与えますか?

 最近は子どもを産んでも仕事もつづけようと考える女性が増えてきました。経済的な自立は、精神的な自立、ひいては夫婦間で対等なパートナーシップを築くためのひとつの手段としても、重要なことでしょう。
 でも、子育て中のお母さんが働くことには、まだまだ批判の目があることもたしかです。新聞なども、子どもの問題行動が起きるたび、「母親が働いていた」「パートに出ていてさびしかった」などと書き立てます。
 学校の父母会で教師が「パートで働いている暇があったら、家にいて子どもをあたたかく迎えてあげてください。そうでないから、非行に走るのです」などと発言したということも聞きます。そんな言葉に不安をつのらせてしまうお母さんも、少なくありません。

家庭で育つのも、保育所で育つのも
子どもには楽しいことなのです

 しかし実際は、共働きの家庭の子どもも健康に育っています。たとえばアメリカの研究者が、幼いときから保育所のような施設で長時間を過ごした子どもと、そうではない子どもでは、もしかしたら発達の違いがあるのではと考えて比較研究をしてみました。
 その結果、長い時間集団保有をされた子どもとそうではない家庭の子どもは、いろいろな知的課題でも、また対人関係や人格の面でも、とりたてるほどの差がなかったのです。
 子どもは家庭で育つのも楽しいけれど、保育所などで育つのも、また楽しいのです。そして、どちらで育ってもたいして違いがないというのは、とても興味深いことだと思いませんか? また、働くお母さんを持つ子どもの最近の調査によると、お母さんの働いていることのプラスの影響が大きいと報告されています。子どもの自立度の程度が高い、特に女の子の考えが進歩的でしっかりしている、働く母親を持つ子どもたちは、自分もそうなりたい、そういう家庭をつくりたいと考えているというのです。こうした報告からも、お母さんが働くことにはなんら問題がないことがわかります。
 もっとも、安心して子どもがあずけられる質のよい保有施設を選ぶことは大切です。また父親である夫が働く妻を認め、ふたりで協力しながら子育てをすることも必要です。そうでなければお母さんは仕事と子育ての二重労働になってしまい、笑顔でいたり、子育てを楽しむゆとりは持てません。
 重要なのは子どもといる時間の長さではなく、中身です。子どもと接する時間は子どもとこころからつきあうということで、時間の短さを補うことができるのです。

育児期は仕事もペースダウン
でもそれは決してむだにはなりません

 仕事にやりがいや楽しさを見出しているお母さんにとっては、子どものいることがハンディに思えたり、あせりを感じることもあるようです。けれど、子どもがいる以上、前と同じように働くのは無理という仕事もあるでしょう。そういう場合は割り切って考えてみてはいかがでしょう。長い人生の中でほんの一時期のことなのですから、むしろこの時期は仕事のペースを落とすくらいの気持ちが必要かもしれません。子どもを育てることによって、人間として育てられることも多いのですから、このペースダウンはむだにはならないはずです。
 1992年には育児休業法も成立し、お母さん、お父さんのどちらでも育児休業がとれるとされています。まだ少数ですが、実際に育児休業をするお父さんも出てきました。こんなふうに、お父さんも仕事のペースを変え、子育てにかかわっていこうという傾向は、とてもよいことだと思います。お互いを尊重しながら対等に生きていこうとする夫婦の姿は、きっと子どもにいい影響を与えると思うのですが、いかがでしょうか。

お母さんが働いていてもなんら問題はありません
むしろプラスの影響が大きいのです。

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