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Part2
放射線と放射性物質の基礎知識 3ページ目
2011/6/1更新

※本稿は2011年第1版です。第2版はこちら

外部被ばくをどう防ぐ?

 「被ばく」について、大まかなしくみはお分かりいただけたと思いますので、今度は現実問題として、少しでも被ばくを防ぐ方法を考えていこうと思います。
 改めて申し上げておきますが、現在の放射性物質の漏出状況で、一般の人たちが健康被害を受けるほどの被ばくをする可能性はきわめて低いといえます。ただ、今後何が起きるか分からないですし、もともと浴びる必要のない放射線は、できるだけ浴びないほうがよいですから、予防的に知っておくとよいと思います。

大気中の放射線量の現状

 日本では全国に「モニタリングポスト」という放射線量を計測する地点があり、放射線量を毎日計測、公表しています。これによると、原発が水素爆発を起こした直後、近隣地域では一時的に高い放射線量を示し、原発から20km圏内の避難指示、30km圏内の屋内退避指示が出されました。その後、徐々に数値は減少し、現在では0.001~0.003mSv/時程度まで減少しています。しかし、これまでの放射線量の累積や今後の累積を予測した場合に、年間20mSvを超える被ばくが予測される地域は、警戒区域や計画的避難区域になり、多くの住民の方が避難生活を余儀なくされています。

 いっぽう、大気の流れによって関東地方でも放射線量の増加が観測されましたが(茨城県水戸市や埼玉県さいたま市で最大0.001mSv程度)、現在では関東地方のどの地域も、ほぼ平時の放射線量(0.00005mSv程度)に戻っているので、特別な配慮は必要ありません。

注意が必要になる外部被ばく量

 現在日本政府は、年間の累積量で20mSvを超えることが予測される地域には、避難指示を出すという方針をとっています。この数値は、発ガン率がわずかに上昇するとされる、年間100mSvの5分の1の値ですから、かなり安全性を考慮した数値といえます。なので、その方針に従っていれば健康被害を受けることはないと安心してよいと思います。

 ちなみに、年間20mSvを1時間の放射線量に換算すると、0.002mSv/hとなります。関東地方で観測された最大値の2倍の量が1年間続き、それを24時間屋外で浴びると到達する量です。これぐらいの数値が観測されるようになったら、被ばくを防ぐ工夫が必要になると考えておけばよいでしょう。

 では、妊娠中の女性や子どもについてはどうかというと、子どもは影響を受けやすいという前提で、規制値もそれにあわせて配慮されているので、私はこの基準で大丈夫だと考えます。
 まず、妊婦と胎児に関してですが、妊婦さん本人は、妊娠したことで放射線の影響を強く受けるようになるということはありません。通常の大人と同じと考えてよいでしょう。胎児は、妊娠4か月以内がもっとも影響を受けるといわれていますが、100mSv未満ならば、その後の胎児には影響が出ないことが示されています。すなわち、妊娠中の女性も胎児も、年間20mSv以下という基準値以下の環境にいれば、放射線の影響を心配する必要はないということです。

 子どもに関しては、専門家のあいだでも意見が分かれているのが現状です。もっと厳しく基準値を設定すべき(年間10mSv程度)という意見もあります。 しかし私個人は、チェルノブイリ事故の調査結果などから判断して、外部被ばくの上限量年間20mSvという数値は、緊急時においては、乳幼児を含め、子どもにも適用せざるを得ない数値だと思います。
 ただ、外で活発に遊んだりスポーツをする時間が長いような子どもは、大気や土ぼこりから放射性物質を経口摂取して、内部被ばくにつながる可能性が大人より高いということはあるかもしれません。避難区域外の福島県内の学校でも、屋外活動が制限されたところがあるのは、このような配慮によるものだと考えられます。
 なお、20mSyがやむを得ない目安と言っても、校庭の土に対する措置など、被ばく量を減らす努力を怠るべきではありません。また、長期的には、20mSvをもとの1mSvに戻していく必要があります。

外部被ばくを防ぐ生活の工夫

 現在の放射線量が平時の量に戻っている地域は、どうぞこれまでどおりの生活をしてください。今後放射線量が再上昇した場合には、次のような工夫をすると外部被ばくをかなり避けられます。花粉症の人の花粉対策や、日焼けを防ぐ紫外線対策と基本的には同じです。

  • 外出時には肌を露出しない服装とマスク
    衣類に付着した放射性物質は洗濯で落ちます。マスクをすると呼吸による内部被ばくの量を減らせます。
  • 雨のときは傘をさす(子どもにはレインコートも)
    大気中の放射性物質は、水滴に溶けて落ちてきます。また、水たまりには近づかないようにします。
  • 外から帰ったら衣服をよくはたいて着替え、うがい手洗いをしっかりと
    衣類は脱いですぐ洗濯すると安全です。放射線量が高い日に長時間屋外にいた場合は、シャワーも浴びるとより安全です。
  • 放射線量が高い日は屋内で過ごし、窓を閉め換気扇も止める
    放射線は窓や壁も突き抜けますが、影響力は10分の1程度に減ります。テーブルの上に食べ物を放置するのはやめましょう。
  • 洗濯物は室内に干す
    衣類に放射性物質が付着するのを防ぎます。

>>次のページでは「内部被ばくをどう防ぐか」について解説します

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