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病気・予防接種

Q. 生後8か月のとき鼠径ヘルニアで左卵巣を切除しました。今後の注意点を教えてください。 (2013.6)

  • (妊娠週数・月齢)9か月

生後9か月の女の子です。8か月のときに鼠径ヘルニアで左卵巣を切除しました。母親として、主に2つの不安を抱えています。ひとつは、将来不妊症にならないか、もうひとつは残った右の卵巣に何かあったら、という不安です。ひとつ目に関しては、右卵巣が機能する限り妊娠は不可能ではないことはわかっていますが、やはり2つ卵巣がある女性よりは妊娠はしづらいのでしょうか?また、月経周期が乱れる可能性はありますか?2つ目に関しては、右卵巣を守る対策を知りたいです。月経が始まったら定期的に右卵巣の検査を受けるなど、してあげられる対策はありますか?五体満足で生まれたのに、鼠径ヘルニアを素早く発見してあげられず卵巣を切除することになってしまったことで、娘に申し訳ない気持ちでいっぱいです。親として精いっぱいのことをしてあげたいと思っています。これからの対応などについて教えていただければと思います。

回答者: 横田俊一郎先生

 生後8か月という乳児期に手術で卵巣を摘出されたということで、将来に対する不安も大きいことと思います。

 鼠径ヘルニアでは、鼠径部に腸管が脱出しているのが一般的ですが、女児の鼠径ヘルニアでは、腸管の代わりに卵巣が脱出していることがあります。触ると腸管の場合に比べてコリコリした感じが多いとされています。鼠径ヘルニアでは、腸が嵌り込んで戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」が合併症として有名です。卵巣でも嵌頓が起こることが知られていますが、腸管の場合のように壊死を起こす危険は少ないとされています。しかし、まれに卵巣が捻転して壊死を起こすことがあるので、卵巣の嵌頓の場合には准緊急で手術をすることになっています。一般的には卵巣を温存して鼠径ヘルニアの手術が行えますが、ヘルニア嚢(のう)という腹膜が突出した袋の部分に卵巣が癒着しているなどの理由で、卵巣を摘出せざるをえないこともあるようです。

 さて、片側の卵巣を摘出したあとの問題ですが、もう一方の卵巣が正常であれば、妊娠は可能ですし妊娠しづらいということもないと思います。また、卵巣から出ているエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)についても、片方の卵巣が正常であればホルモンとしての働きに問題はなく、月経周期が乱れることもないでしょう。ただし、万一、15歳になっても初経が見られないときには産婦人科医に相談してください。

 残っている卵巣を守る方法についてですが、卵巣はおなかの深い所にあるので外傷などで損傷を受けることはめったにないと思います。月経が始まったということはホルモンが正常に分泌されているということになりますが、初経が遅れたり身体の成長が極端に遅い場合には、ホルモンの異常のことも考えてみることが必要です。

 あとは、残っている卵巣に嚢腫などが発生しないか気をつけるということになりますが、あまり心配しすぎることはないでしょう。ただでさえ不妊の方が増えている時勢ですので、極端なやせや肥満に気をつけるなど健康的な生活をすることがもっとも大切かもしれません。卵巣の検査としては腹部エコーや血中ホルモンの測定が役立つかもしれませんが、詳しくは産婦人科の医師に相談されることをお勧めします。