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発育・発達

Q. 2歳9か月。生活の様子から自閉症の可能性があるのではと気がかりです。 (2013.8)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳9か月の女の子です。絵本やお絵描きが好きですが、気に入らないとクレヨンや積み木などを投げたりします。簡単な2語文や絵本のセリフなどを丸覚えしたものをよく話しますが、名前の認識が少し薄いように感じます(呼びかけると60%くらい反応します)。幼稚園のプレ教室にも通っていますが、みんなと同じように動くことや、集中して何かを作る作業が苦手のようで、静止すると大泣きして道具をひっくり返します。大人の言うことはだいたい理解している感じですが、行動に移せるときと移せないときがあります。手を長時間つないで歩くことも苦手のように感じます。自閉症の可能性があるでしょうか。また、親として何かできることや、心がけてあげたほうがよいことなどがありますか。

回答者: 帆足暁子先生

 いま2歳9か月。自閉症の可能性があるのか、気になっていらっしゃるのですね。

 「簡単な2語文や絵本のセリフなどを丸覚えしたものをよく話す」とのことですが、「おいしい?」と聞いたときにお母さんの顔を見て「おいしー」と「にこっ」と笑うなど、気持ちのやりとりができるようでしたら大丈夫。絵本の丸覚えも、絵本の好きな子どもは、ひらがなが読めなくても何度も読んでもらった言葉を音楽のように覚えて、あたかも読んでいるように話してくれます。終わったあとに「とっても上手だったね。もう1回読んでくれる?」とお願いしたら、うれしそうに「いいよー」と読んでくれるでしょうか。
 こういう「人と気持ちのやりとり」が苦手なのが、自閉症の特徴のひとつです。また、言葉がなくても、目と目を合わせて「にっこり」笑いあえたり、取ってほしい物や見てほしい物への指さしがあったり、「いないいないばぁ」「バイバイ」など大好きな人の真似ができれば、だいたい自閉症の可能性は少なくなります。そして、「見立て遊び」として四角い積木をベッドに見立ててお人形を寝かせたり、パンに見立てて「いただきます」をしたりして遊べれば、もっと安心して大丈夫です。

 一方、「呼んでも60%くらいの反応だったり、みんなと同じように動くことが苦手だったり、理解しているのに行動に移せるときと移せないときがある」など、ちゃんと人を意識しているのかしらと、そのやりとりに不安を感じることもありますね。
大切なことは、その理由を考えてみることです。

 2歳代は第一反抗期の頃で、大人の言う通りに行動したくない時期です。自我が育ってきて「自分が」「自分で」「いや!」と強く主張します。「やりたいこと」「やりたくないこと」がはっきりしている時期です。そして、「だめ」と拒否されるとからだを張って癇癪を起こします。そういう自我の主張ということから、「気に入らないとクレヨンや積み木などを投げる」「大泣きして道具をひっくり返す」「手を長時間つないで歩くことも苦手」などの行動が起きている可能性も考えられます。

 あるいは、あまり「理解」できていないために、「名前の認識が少し薄い」「みんなと同じように動くことや、集中して何かを作る作業が苦手」「だいたい理解している感じだが、行動に移せるときと移せないときがある」ということなのかもしれません。そういう場合は、何が理解を妨げているのかを探して具体的に短いセンテンスで説明したりして、理解できるようにしてあげることで解決することもあります。

 では、いまのお子さんに親としてできることや心がけてあげたほうがよいことは何でしょうか?

 自閉症の可能性が気になっているということは、もしかしたら、お子さんとの気持ちのつながりをあまり感じずにいられるのかもしれません。もしそうなら、まずは、あなたがお子さんにとって「気持ちが強く結ばれている大切な人」になりましょう。実は、これが生きる力の基盤になります。「気持ちが強く結ばれている大切な人」の存在は子どもに安心感を与えますし、何よりも、子どもがその人にほめられることや止められることを通して何が望ましい行動で何がよくない行動かを学習し、生活する力や適応する力を身につけることができるからです。

 「気持ちのつながり」は、赤ちゃんのときから世話をされることで自然にできていくことが多いのですが、できにくい子もいます。そのときのコツは、楽しいことを一緒に楽しみ困ったことを解決してあげることです。

 お子さんは「絵本やお絵描きが好き」なのですね。お子さんの好きなことを一緒にたくさんしてください。一緒に楽しんでくれる人の存在はお子さんに強い印象を与え、気持ちの結びつきをつくります。そして、お子さんが困ったときは何が原因なのかをお子さんの立場で考え、乗り越えられるよう工夫してあげてください。

 それでも、やはり自閉症の可能性を考えられるようでしたら、迷わずお近くの保健センターや発達相談外来のあるクリニック、療育機関を訪ねてください。何でもなければそれで安心です。もしも自閉症の可能性があった場合も、早くから療育を受けるチャンスにつながります。

 あなたが安心して子育てできることを大切にしていきましょう。