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病気・予防接種

Q. 3歳。下痢が続いたため検査を受けたら大腸菌O1が検出されました。 (2013.9)

  • (妊娠週数・月齢)3歳

3歳の息子が、3週間程前から下痢を繰り返すようになりました。整腸薬で様子を見ても治らないため便の検査を受けたところ、大腸菌O1が検出されて抗生剤が処方されました。それでも下痢が治まらないため別の病院で再度検査をしたところ、また大腸菌O1が検出されましたが、「放っておけば治るし、下痢とは関係ない」と言われました。下痢はいまだに続いています。1日に2、3回程度で量は多くありませんが、何回かに1回は水便が出るので怖くて外出もためらってしまいます。医師には、回数も多くないし、体重が減らなければ問題ないと言われたのですが、下痢の状態が長く続くのが不安です。便の検査で異常がなければ問題ないと考えていいのでしょうか?

回答者: 横田俊一郎先生

 大腸菌は正常な人の腸に住みついている菌で、子どもでは膀胱炎や腎盂炎の原因になることはあっても、通常は腸炎などを起こすことはありません。

 しかし、一部の大腸菌は腸の病気を引き起こすことがあり、病原性大腸菌と呼ばれています。「病原性大腸菌O157」の名前はどなたでも知っていると思いますが、この菌は病原性大腸菌のひとつです。

 病原性大腸菌にはいくつかの種類があり、いずれも激しい水様性の下痢を起こし、腹痛や血便も起こります。O157は腸管出血性大腸菌と呼ばれ、赤痢菌の毒素と似ている毒素を産生し、溶血性尿毒症症候群という出血、貧血、腎不全、神経症状などを伴う重い病気を起こすことがあります。この病気があるので、病原性大腸菌というと誰でも心配になるわけです。

 しかし、正常な大腸菌と病原性大腸菌を検査で区別することは簡単ではありません。O157では赤痢菌の毒素と似ている毒素(ベロ毒素)をもっているかどうかで、病原性があるかどうかを判断します。すなわち、便の中からO157が見つかっても、ベロ毒素を持っていなければ問題ないと考えるわけです。O157はべロ毒素を持っている確率が高い大腸菌ですが、それ以外にもベロ毒素を持つ大腸菌があります。O1もベロ毒素を持っていることがありますが、その確率は高くありません。ご相談のお子さんがベロ毒素の検査をしたかどうかはわかりませんが、病院の先生は、ここで見つかったO1は正常な大腸菌だと判断されたのだと想像します。

 また、病原性大腸菌の治療についても、日本ではO157で症状が強い場合には抗生剤を使うことが一般的ですが、米国では症状が悪化することもあるとして使わないのが一般的になっています。

 このお子さんの下痢と、便の検査で見つかったO1が、ほんとうに関連があるのかどうかがポイントですが、症状もあまり強くはないので、印象としてO1はたまたま検出されただけなのではないかと想像します。

 下痢の原因はほかにもたくさんあります。ベロ毒素を持っていないことが確認できれば、無治療でこのまま経過を見ていくのがよいと考えます。