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発育・発達

Q. 生後2か月の娘の頭囲が大きいと指摘されました。どんな問題がありますか。 (2013.12)

  • (妊娠週数・月齢)2か月

生後2か月を過ぎたばかりの女の子です。海外の発展途上国で出産し、子育てをしています。頭囲が大きく、頭の右側にこぶのようなものがあります。最初はブヨブヨしていましたが、いまはそれほど柔らかくないようです。右側の耳の後ろのあたりにも腫れというか、小さなこぶのようなものがあります。何か病気の症状ではないかと気がかりです。これまでの数値は下記の通りで、頭囲が大きいため他の病院で検査するよう言われました。しかし主人も頭が大きく、赤ちゃんはミルクもよく飲み、頭を痛がったり大泣きすることもなく元気そうです。頭囲が大きいことで懸念されることや病気などについて教えてください。
 出産時/体重3.1kg、身長48cm、頭囲34cm
 10日後の健診/体重3.5kg、身長49cm、頭囲37cm
 1か月健診/体重4.9kg、身長52cm、頭囲39cm
 2か月健診/体重5.7kg、身長58cm、頭囲42.5cm

回答者: 多田裕先生

 ご質問には、①頭の右側にこぶのようなもの(最初はブヨブヨしていたが、いまはそれほど柔らかくない)がある、②右耳の後ろに腫れ(小さなこぶのようなもの)がある、③頭囲が大きい、という3つの心配が記されています。それぞれについて順に考えみましょう。

 まず、①の頭の右側にあるこぶのようなものについて考えてみますと、頭血腫の可能性が高いのではないかと思います。頭血腫は、分娩時に赤ちゃんの頭に強い力が加わって、頭がい骨とその骨を覆っている膜(骨膜といいます)との間に出血が起こり、血腫となったものです。吸引分娩などによって生じることが多いのですが、産道を通る際に母体の骨盤によって胎児の頭が強く圧迫されることで生じることもあります。最初はブヨブヨしていて押すと少し凹みますが、やがて造骨細胞の働きでこぶのように固く盛り上がり、その後破骨細胞によって処理され、4〜5か月のうちにわからなくなります。

 新生児の頭部の腫れでは、頭血腫の他に分娩の際に生じる「産瘤」と呼ばれるむくみのことがありますが、生後1週間までには消えてしまうもので生後2か月の赤ちゃんでは考えにくいでしょう。ご相談に書かれた経過は頭血腫のそれに合致しており、心配のないものだと考えていいでしょう。

 次に、②の耳の後ろにある小さなこぶのような腫れですが、その「こぶ」や「腫れ」が耳の後ろにもともとある骨の出っ張りのことなのか、あるいは骨とは別にできたものなのかが問題となります。ご相談の赤ちゃんは右側の腫れが気になるとのことですが、反対側の左の耳の後ろにもっと小さいが似たような腫れがある、ということはないでしょうか。もしも左側にも同じような腫れがあるという場合は、向き癖などで片側が目立つだけで、両側にもともとある骨の出っ張りだと考えていいでしょう。実は、乳児健診などで「耳の後ろにこぶがある」と訴える親ごさんはかなりいるのですが、その多くが本来ある骨の出っ張り(これを乳様突起といいます)で、心配のないケースがほとんどです。

 最後に、③の頭囲が大きいというご心配について考えてみましょう。これが病気などの懸念がある数値なのか、あるいは正常な発達によるものかを見極めるために、母子健康手帳に載っている乳児の身体発育曲線が役立ちます。生まれたときから現在までの身長・体重・頭囲の数値の変化をここにプロットしてみましよう。

 発育曲線には帯が示されており、ここに同じ月齢の94%の赤ちゃんの数値が入ります。もともと体格が大きい子は帯の上のほうを、小柄な赤ちゃんは下のほうを推移しますが、帯の曲線に沿って増えていればその子なりの順調な発育をしているものと考えられます。
ご相談の赤ちゃんの数値を書き入れてみると、身長・体重は帯の曲線に沿って伸びており、身長は標準通り、体重はやや大きく、順調な発育をしていると考えられます。しかし頭囲は帯から外れていて、その数値を線で結ぶとずれが次第に大きくなっている傾向が認められます。こうした場合は、念のため病院で検査を受けておくことが重要です。

 頭囲が大きいことで心配される子どもの疾患には脳腫瘍や脳の浮腫、水頭症などいくつかありますが、乳幼児でまず考えなければならないのは水頭症です。水頭症とは、脳内の「脳室」という場所にある「髄液」の吸収や流れが悪いときに起こる疾患で、先天的に髄液の流れが悪い場合や、頭蓋内の出血、感染症などによって起こります。髄液が脳室に溜まると脳室が拡大していき、その結果、脳が圧迫されてさまざまな症状が現れます。症状が進むと頭が大きいだけでなく、視神経を圧迫して視力障害が生じるなど赤ちゃんの発育・発達に重大な影響を及ぼします。そうしたことを防ぐため、水頭症と診断された場合は脳室と腹部を管でつないで髄液を腹腔に流す「シャント」と呼ばれる処置をし、脳への圧迫を防ぐ治療を行います。

 このような異常がなく、ご主人のように頭が大きいだけの方もいます。頭が大きくても原因となる疾患がなく、けいれんその他の神経症状が無いなら心配いりません。しかし、治療した方が良い疾患があるといけないので、まずは、これまでの経過を示す資料(発育曲線など)を持って小児科医に相談し、必要なら検査を受けたり専門医を紹介してもらうなど適切な対応をすることが必要です。