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発育・発達

Q. 1歳半の子。産声をあげた後に全身紫色になりました。後遺症の心配がありますか。 (2011.3)

  • (妊娠週数・月齢)1歳6か月

1歳半の子ですが、出生直後に産声はあげたものの、その後は泣かず全身紫色になってしまいました(酸素濃度60%)。それから1時間ほど処置をしてからだの色も戻り、酸素濃度90%まで回復しました。これまで、とくに発育や発達に問題はありませんでしたが、これから何か障害や病気などが起きる心配はありませんか。

回答者: 多田裕先生

 赤ちゃんが出生直後にあげる大きな泣き声を「産声」といいます。胎盤から酸素を得ていた赤ちゃんが自発呼吸を始める際、それまで使っていなかった肺を大きく広げて深呼吸をして元気な泣き声をあげるのです。

 胎内では胎盤から酸素を得るため、赤ちゃんの血液中の酸素濃度は低いのですが、出生後は自発呼吸によって肺から酸素を取り入れて次第に酸素濃度が上がっていきます。生まれた直後は紫色(チアノーゼ)だった赤ちゃんの全身がだんだんとピンクに染まっていくのはこのためで、健康な人の血中の酸素濃度は90%以上を示します。ご質問にある「酸素濃度60%」とは、酸素が不足してチアノーゼが起きる状態を示しています。

 赤ちゃんが大きな産声をあげるのは、分娩経過に大きなトラブルがなく、スムーズに自発呼吸を始められたことの証です。しかし、なかには産声をあげない赤ちゃんや弱々しい産声の赤ちゃんもいて、「新生児仮死」といわれます。新生児仮死とは、分娩の過程や出生時に低酸素状態になり、呼吸障害や循環不全に陥った状態をいい、早産や過期産、あるいは臍帯が巻きつく、回旋異常、胎盤早期剥離といった分娩時のトラブルの際などに起こりやすくなります。

 出生時の赤ちゃんの状態は5つの項目を0〜2点で判定する「アプガースコア」によって評価されます。


 生後1分で8点(7点とする場合もあります)以上を正常とし、点数が低いほど重症の仮死として速やかに適切な処置や治療が行われます。さらに生後3分、5分、10分と経過を追って評価していき、予後に問題が起きないよう最善の対応を行います。しかし、アプガースコアが3点以下の重症仮死の場合には脳細胞が酸素不足による障害を受けて、意識障害やけいれん、尿が出なくなるなど重篤な症状が出て、予後に脳性まひなどの後遺症が残る場合もあります。軽度や中等度の仮死では、適切な処置を行うことで後遺症が残る心配はほとんどありませんし、最近では、重症仮死の赤ちゃんも生後の適切な処置、場合によっては脳を低温にして保護する処置なども試みられるようになり、後遺症が少なくなってきました。ただ、赤ちゃんがもともと基礎疾患を持っていたり、胎盤機能の低下によって仮死になった場合は、予後があまり良くないことがあります。

 その一方で、出生時に「正常」だった赤ちゃんも、きちんとした管理や経過観察でスムーズに子宮外生活に適応させることが重要であることは言うまでもありません。

 さて、ご相談の赤ちゃんですが、産声はあげたものの、その後はチアノーゼが出て血中の酸素濃度が60%だったとのこと。その後の経過はわかりませんが、気管内挿管をしたとか、けいれんや腎臓機能低下などがあったと書かれていないので、そうした重篤な症状はなかったものと推察します。仮死が赤ちゃんの発育や成長に悪影響を及ぼすかどうかは重症度が問題で、重症仮死の状態が長く続くほど予後に影響が出やすいのです。また、重い脳性まひなどの後遺症については生後間もなく判明しますが、たとえ後遺症があっても軽微だと生後半年から1年くらい経ってから症状が顕在化してくる場合もあります。しかし、仮死があっても適切な治療や処置をして出生後の経過に大きな問題がなく、1歳ころまで発育や発達に問題がなかった赤ちゃんに、その後後遺症が出てくる心配は少ないのです。

 ご相談の場合も、1時間後には酸素不足の状態が改善されて、その後の経過も問題がなく、1歳半の現在まで発育などに問題がなかったのなら、新生児仮死の悪影響がこれから出てくる心配はないものと思っていいでしょう。

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