赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバー病気・予防接種

病気・予防接種

Q. 出産時に濁った羊水を吸い込み治療中で、健康への影響が気がかりです。 (2011.10)

  • (妊娠週数・月齢)0か月

誘発分娩で予定日から10日遅れで3932グラムの男の子を出産したばかりです。出産時に濁った羊水を肺に吸い込んだためにすぐにNICUに入りました。いまはまだ肺に濁った羊水があるため酸素投与を30%しています。レントゲンでは白い影が少しまだある状態です。この影が完全になくなるまで酸素投与が続くのでしょうか。これからの健康への影響も気がかりです。呼吸が少し早いとのことですが、ミルクもよく飲み、うんちやおしっこも普通です。

回答者: 多田裕先生

 ご相談に「出産時に濁った羊水を吸い込んだためにNICUに入った」とあるのは、出生後に胎便吸引症候群の症状があってNICUですぐに治療を始めたということだと思います。

 赤ちゃんは母親の胎内では羊水のなかに浮かんで、胎盤から臍帯を通して酸素や栄養をもらっています。しかし子宮が収縮し臍帯の血流が一時的に悪くなったり、胎盤の機能が低下したりして低酸素状態になることがあります。普通のお産でも赤ちゃんが産道から出るときには酸素の供給が十分でなくなり、苦しくなった赤ちゃんは大きな呼吸をして肺を広げます。この時に出るのが「産声」です。吸い込んだ空気が「肺胞」という部分まで行きわたると、そこで酸素が血液中に取り込まれ、からだ中に運ばれていきます。

 しかし、前述したように、ときには赤ちゃんがまだ胎内にいるときに何らかの理由で酸素不足になることがあります。子宮内で赤ちゃんの酸素が不足すると腸が動き出すので、普通なら出生後に排便する胎便が出てしまい、羊水が汚れてしまうことがあります。これが「羊水混濁」です。酸素不足が軽く短期間なら大きな問題がない場合が多いのですが、酸素不足が強いと赤ちゃんは胎内で呼吸様運動を始め、胎便が混じった羊水を吸い込んでしまいます。

 羊水の吸引は子宮内でも産道でも起こることがあって、口やのどの中が汚れた羊水でいっぱいになって生まれてくる場合があります。この状態で肺呼吸が始まると胎便が混じった羊水が気管支や肺胞の一部に詰まってしまい、呼吸障害が起こります。これが胎便吸引症候群で、強いと酸素不足のためチアノーゼが生じ、それが長引くと心臓や脳に十分な酸素がいかなくなってさまざまな合併症が起こったり、ときには脳性まひなどの後遺症が残ることもあります。

 そうしたことのないよう、産科医や小児科医は出産前後の赤ちゃんの状態を注意深く見守り、羊水混濁があればすぐに口の中や気道内の羊水を取り除きます。呼吸障害が強ければ酸素濃度を高くしたり人工呼吸器を使用しながら、汚れた羊水が次第に吸収されていくのを待ちます。

 ご相談の赤ちゃんは出産後すぐにNICUに入ったとありますから、出生直後に適切な処置が行われたものと推察します。現在、30%の酸素投与をしているとのこと。空気中に含まれる酸素濃度が21%であることを考えると、まだ少し酸素濃度を上げないと肺から酸素を十分に取り入れることができない状態なのでしょう。レントゲン写真の肺の白い影は胎便が詰まって空気が十分に入らない箇所を示します。肺に多少の変化があっても自発呼吸で十分な酸素が取り込めるようになれば次第に酸素濃度を下げていき、やがて中止できます。その段階で退院許可が出る場合もありますが、呼吸が早いなど心配なことがあればもう少し入院して経過観察をするかもしれません。

 しかし、入院中に大きな合併症や後遺症もなく退院することができれば、これからの成長過程で何か問題が出ることはまずないと思っていいでしょう。ただ、呼吸障害などの影響や肺の機能低下などの影響がしばらくは残ることがあるので、風邪などの感染症にかかったときには早めに受診するなどの注意をしてください。