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子どものこころを育てる 6

…すると、乳・幼児期に
親は何をしてあげればいいのですか?

「甘え」と「自立」の間で揺れてしまうのが親心

 いままで見てきたように、赤ちゃんは生まれながらの気質や個性を持っています。実際、人はどんなに幼くても自分を主張し、自分で納得しながら、生きたいという意志を持っていると思えるような行動をよくします。人間は、他人に指図されるのが嫌いで、自分らしく生きたい生きものと言ってもいいでしょう。
 親の役目とは、人が生まれ持っている自立への欲求を大切にしながら、本当に自立を実現できるまでの力をつけてあげること、と言えます。一方で、かわいいのでつい甘やかしてしまう、でもこれが自立をさまたげはしないか、という不安も出てきてしまいます。子どもを甘やかしたい気持ちと自立への願いの間で揺れてしまうのも、また親心でしょう。

「甘え」、それは「人と交わりたい」という人の持つ本質的な欲求です

 人に甘えたい、頼りたい、という欲求と、自立への欲求は、けっして相反するものではありません。人は自立したいと望んでいますが、孤立は嫌いです。ときには甘える気持ちを誰かに受け止めてほしいと願います。実は、私たちはこのふたつの欲求をうまく調整しながら生きているのです。
 心理学では、こうした「甘えたい」「頼りたい」という気持ちを、「愛着」と呼びます。子どもが「まわりの人と交わりたい、愛情をやりとりしたい」「気持ちのうえで結びつきたい」、あるいは「困ったときには助けてほしい」「支えになってほしい」など人の気持ちの結びつきには欠かせない欲求を、こう表現するのです。
 人間は昔から社会を形成してきましたし、そうした社会生活をスムーズに運営していくためには、この愛着要求はとても大切です。一人ひとりに「誰かと結びつきたい!」という要求があるからこそ社会は成り立つし、人も生きていけるのです。
 現実に、この欲求がうまく満たされないと、人は平静ではいられません。自立どころではないのです。まわりの大切な人たちとこころの交流や愛情のやりとりができなければ、大人でも精神のバランスを崩してしまうのです。

人っていいな、そんな信頼感を築くのが
赤ちゃん時代のテーマ

 人との関係を持ちはじめるのは、赤ちゃん時代です。しかも、これはむずかしいことではありません。社会を作って暮らしてきた人間には、生まれたときから「人と結びつく傾向」が備わっているからです。ですから、親やまわりの人たちにかわいがってもらっていると、「人って信頼していいんだな」「甘えていいんだな」という気持ちが育まれます。
 それは同時に、自分の要求が相手に通じたり、要求通りに物事が解決していくという貴重な体験をしていることでもあります。これは、自分の持つ力への自信や有能感にもつながります。人を信じ、ひいては自分を有能だと思うこの自信は、赤ちゃんのこれからの生活や人生に重要なものです。また、こうした交わりを通して得る「人と交わる楽しさ」も、人生には大切です。
 お母さんにかまってもらいたくて子どもが泣いているとき、ここで自立させなければとばかり突き放してしまうと、子どもはいっそうまとわりつきます。抱き癖がつくからと「抱っこして!」という甘えの気持ちを受け入れてあげなければ、赤ちゃんはそのうちあきらめてしまうでしょう。自分は愛されてないと感じて、人への関心や人への信頼も失うことになりかねません。
 赤ちゃん時代の、周囲の人にたっぷり甘えさせてもらう体験は、人間関係の基礎にもなるものです。ですから、特に赤ちゃん時代には愛情をたっぷり注ぐことが大切なのです。

甘えを受け止め、たっぷりかわいがる。
赤ちゃんには、実はそれだけで
十分なくらいです。

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