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産後のからだ

Q. 産後6週間。コレステロール値が急に高くなりました。 (2021.1)

  • (妊娠週数・月齢)産後

産後6週間たちました。退院後より高血圧となり、先日、血液検査をしました。すると、総コレステロール値が293、LDL値が189もあり、病院からは「薬物治療開始が必要」との診断がつきました。コレステロール値が、産後に急に高くなることはありますか? 何が原因なのでしょう? 何に気をつけて生活すればよいでしょうか?

回答者: 安達知子先生

 コレステロール値が急に高くなったとのことですが、これは、妊娠中にコレステロール値を測定してその値と比較しているのでしょうか?それとも今回の妊娠する以前の値と比較しているのでしょうか。もしも、後者であれば、あまり心配はいりません。

 妊娠中は通常、血中の脂質は高値になり、産褥期は低下してくるものの、しばらくの間それを引きずって高い値を示すためです。

 妊娠時は胎児を発育させるために、多くのエネルギーが必要です。エネルギーの素はブドウ糖ですので、ブドウ糖をたくさん作り、胎盤を通して胎児側へ流し、胎児へエネルギーを供給しますが、妊娠後半期はブドウ糖だけでは足りないので、脂質を分解して脂肪酸を作り、これを胎児へ供給してエネルギーにしています。このような糖代謝や脂質代謝は胎児の発育のための変化であり、妊娠中、食事から吸収された脂質は妊娠後半期に備えて体の脂肪細胞の中にエネルギー源として蓄えられており、必要に応じて分解してエネルギーとして提供しています。これらの変化を引き起こすのは胎盤から分泌されるいろいろなホルモンやたんぱく質の作用によるもので、糖代謝に必要なインスリンの作用を抑えるインスリン抵抗物質を胎盤でたくさん作っていて、この抵抗物質の作用のために妊娠中はたくさんのインスリンを作らざるを得ず、糖代謝ばかりでなく、脂質代謝にも大きな影響を与えています。妊娠中は誰でもコレステロール系や中性脂肪が高いことは知られています。

 ところで、妊娠が終了するとこの胎盤は体から排出され、体に蓄えられた脂肪細胞から出される脂質は胎児に利用されることもなく、また、特に女性ホルモンの材料となるLDLコレステロールも、産後しばらくは女性ホルモンも作る必要はなく消費されないために、ある程度の高脂血症が続きます。

 一方、産褥期に高血圧になったということから、もともと高血圧になりやすい高脂血症の素因を持っているのかもしれませんので、3~4か月後にまた、脂質系の測定をして、低下してくるか見ることは必要です。特に、ご両親などに高脂血症がある方のリスクは高いですので、代謝内科、糖尿病内科などの専門医に診てもらうことは大切です。脂質の高い食事に気をつけて、適切な運動なども行い、妊娠前の体重、できれば標準体重に戻すようにしましょう。