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子どものこころを育てる 13

「3歳までは母親の手で」
と考えていますが、
それは古い考え方でしょうか?

大切なのは、親が毎日の生活を
楽しんでいるかどうかでは?

 わが国ではまだ「子どもが幼いときは母親は家にいて」、「幼い間は母親の手で育てるのがよい」という考え方が強いと思います。
 しかし一方で、「家にいる」選択をしたお母さんたちにふりかかっているのが「働いていないのは自立していないことだ」というプレッシャーのようです。女性も自立しなければいけない、働かなければいけない、というプレッシャーです。
 「好きで家にいて、楽しく子育てをしているのに、どうして?」と思うお母さんもいますし、「自分は子育てしかやってない」「社会から取り残されている」という劣等感や自己不全感を感じてしまう人もいるようです。
 子育てはめんどうだし、つらいし、一方同じ年齢の独身者は自由を楽しんでいるようだし……と子育て最中のお母さんたちの欲求不満はつのるのです。
 お母さんの自立は確かに大切です。子どものためにもお母さん自身にとってもです。お母さんであっても「自分の人生の主人公は自分」という生き方ができるとよいと思います。しかし働けば自立できるかというと、そうではないでしょう。こころの持ち方の問題です。

子どもを生きがいにしてしまうお母さんは
子どもの自立のさまたげになります

 まずは、「子どもからの自立」です。すでに述べたように、親という安全地帯を手に入れると子どもは、それに勇気を得て、世界をどんどんひろげていきます。わが子だからといって子どもが親の言うままになり、親の影響を大きく受けるということは幼稚園に入る頃にはもう減っていますし、小学校に入る頃にはさらに少なくなります。
 それこそが、子どもの成長です。いつまでも親の影響をそのまま受けていくようでは、むしろ困るのです。こうした子どもの成長を親の側が喜べることが重要なのです。
 ある調査では、35歳までの主婦の6割が生きがいは何ですかと問われて「子どもが生きがい」と答えています。でも、子どもは実は生きがいにはなりません。だいいち、子どもに対して失礼ではないでしょうか。あなただったらどうでしょう。人から「あなたは私の生きがい」と言われて、どういう気持ちになりますか? 恋愛中ならいざ知らず、誰かから「生きがい」などと言われたら、息苦しくなるのではないでしょうか。
 親が子どもに対して「あなたは私の生きがい」と言うのも、実は同じなのです。このようなお母さんは、子どもが自分の人生の主人公になる道筋を、妨害しかねません。

その生き方で悔いはないか、
不満はないかを考えてみて

 子どもが外に羽ばたいていくのを喜ぶためには、お母さん自身も自立すること、つまり「自分の人生の主人公」であることが必要です。
 たとえばあるお母さんは、高校生の息子から「お母さんは自分で何かやることがないの」と言われてぞっとしたと打ち明けてくれました。「わが子のため」「家族のため」という自己犠牲が単なる自己満足であってはならないのです。
 なにより考えてみたいのは、いまの自分のあり方で、あとで人生をふりかえってみて「ああ、よかったな」「楽しかったな」と思えるかどうかです。中途半端な気分をかかえたまま子育てをしても、楽しくはありません。働くか働かないかではなく、自分自身がいま本当に一生懸命生きていて、この人生に悔いがないかどうかを、自分に問いかけてみる必要があると思うのです。

大切なのは「子どもからの自立」
そして「お母さん自身の自立」
それは外で働くことだけを意味しません。

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