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病気・予防接種

Q. 完全母乳の6か月の子。くる病予防のためビタミンDをどう補えばいいですか。 (2014.3)

  • (妊娠週数・月齢)6か月

生後6か月の子の母親です。完全母乳で育ててきましたが、テレビの報道番組で完全母乳の乳幼児にくる病が増えていることを知り、心配になりました。くる病とはどういう病気で、どんな症状が起きるのか、詳しく知りたいと思います。くる病が増えていると知ってから、予防のために1日1回ミルクを与えてきましたが、最近になって哺乳びんを嫌がり、ミルクを飲まなくなりました。母乳にはビタミンDがほとんど含まれないとのことですが、ミルクを飲まない場合はどのように補えばいいでしょうか。また、日光浴にも害があると聞きますが、くる病の予防には日光浴をさせたほうがいいのでしょうか。

回答者: 多田裕先生

 子どもの手足の骨は、骨の幹の部分とその先端にある軟骨の部分からできており、その境の部分にカルシウムやリンが沈着して骨となることで、骨が伸びて成長します。ビタミンDが不足していると骨がうまく形成されず、背の伸びが悪くなったり、下肢が曲がり極端なO脚(がにまた)になります。これがくる病です。成人ではビタミンDが不足すると骨粗しょう症などを発症します。

 私たちはビタミンDを食べ物から栄養として摂取したり、皮膚に紫外線を受けて体内で合成したりします。栄養状態が悪く、陽当たりの悪い家も多かった時代には乳幼児のくる病は珍しくない病気で、それを予防するためにビタミンDを多く含む「肝油」を飲ませたり、日光浴が勧められていました。しかし、栄養が改善し、アルミサッシなどで家の中が明るくなり、離乳食も普及し、さらにミルクにはビタミンDが添加され、そのミルクで育つ赤ちゃんの比率が多くなったことなどから、わが国ではくる病はほとんどなくなりました。このため、医師も一般の方もビタミンDの不足に注意を向けなくなってしまいました。

 最近はこれに反して、母乳育児が普及する一方で、紫外線の害に注目して極端に日光を避ける暮らしをする家庭が出てきたうえ、アレルギー疾患の発症を防ごうと離乳食の開始時期を遅らせたり、ときには自己流の除去食を行う親ごさんもいて、深刻なビタミンD欠乏が見られるようになり、再びビタミンD欠乏性くる病への注意の喚起が必要になったのです。

 さて、ご相談のケースですが、生後6か月の赤ちゃんを完全母乳で育てておられるとのこと。母乳は免疫などの面で赤ちゃんにとって良いものですが、その一方で、ビタミンD含有量が少ないといわれていることから心配して1日1回ミルクを足しておられたのだと思います。結論から言えば、嫌がる赤ちゃんにあえてミルクを飲ませる必要はないでしょう。

 確かに、母乳はビタミンD含有量が少ないのですが、吸収率が良いこともわかっています。しかし、母乳だけでは赤ちゃんに必要な量の半分程度を摂取できる程度なので、まずは、お母さんが栄養バランスの良い食事を心掛けて、ビタミンDの多い食品(卵黄、魚、乾燥しいたけなど)を積極的にとること、母子ともに極端に紫外線を避けずに帽子をかぶって散歩や外気浴をすることなどでビタミンDが不足しないよう心掛けることが、くる病の予防につながります。加えて、生後5〜6か月になったら離乳食を開始し、1歳半頃までには母乳だけでは不足しがちな栄養を食事から摂れるようすることもとても重要です。

 ビタミンDは脂溶性ビタミンなので、取り過ぎると害も出ます。食品から摂取する程度なら心配ありませんが、サプリメントで摂取する場合には過剰にならないような注意も必要です。赤ちゃんは胎児期に体内に蓄えられたビタミンDがあるので、母乳栄養であるからといってすぐにくる病を発症することはありません。上記のような注意を守って安全に母乳育児を続けてください。とくにアレルギーがあるために離乳食や幼児食として摂取する食品に制限がある場合には、主治医に相談されることをお勧めします。