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妊娠中の気がかり(体重・食事・病気・体調など)

Q. 妊娠13週なのですが、甲状腺機能の血液検査の値が心配です。 (2017.9)

  • (妊娠週数・月齢)妊娠4か月 (12〜15週)

現在40歳、妊娠13週目、不妊治療を行い、顕微授精(ICSI)で子どもを授かりました。10週0日に甲状腺機能を調べる血液検査でTSH5.8と指摘され、12週0日より薬を飲み始めています。(FT3、FT4は未測定)。妊娠する10か月前にTSH8.67でしたが、そのときは胎児への影響の知識がなく、何もせず過ごしてしまいました。現在13週目、現時点で胎児の成長や見た目には異常はなく、やや大きめの成長です。このレベルのTSHで、現時点で胎児へ影響している可能性はあるのでしょうか? 妊娠初期に治療をせず、妊娠12週からの投薬で効果はあるのでしょうか?

回答者: 安達知子先生

 甲状腺機能は、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモン(T3、T4)と脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値で評価します。甲状腺ホルモンはその多くが血液中で結合タンパクと結合している状態にあり、タンパクと結合していない遊離型のものがホルモン作用を発揮します。妊娠中は特に結合タンパクが増加しているため、甲状腺ホルモンは遊離型のものを測定します。TSHの正常値は大体0.3~4程度です。TSHが上昇していると甲状腺機能が低下していると評価し、0.3を下回っているときは機能が亢進していると評価します。0.3未満のときはどの程度甲状腺機能が亢進しているかを知るために、FT3(遊離型T3)とFT4(遊離型T4)の測定をします。甲状腺ホルモンは大切なホルモンなので、甲状腺機能が少々低下しても、TSHを多めに分泌して、血液中の甲状腺ホルモンの値を正常に保ちます。TSHが10くらいまでは十分に甲状腺ホルモン値は正常範囲にとどまるため、あまり心配はありません。しかし、いつもTSHを多く分泌して甲状腺をつねに刺激していることは甲状腺の腫大を引き起こすこともあり、甲状腺ホルモンを外から補充し、安定的な甲状腺ホルモンが血液中にあるようにします。

 妊娠の10か月前にTSHは8.67のため、甲状腺機能は低下しているものの実際の甲状腺ホルモンは正常範囲を保っていたと考えられます。10週の時点で5.8とやや低下しているように見えますが、この時点は、初期胎盤からヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが一番高く作られている時期に当たり、実はhCGはTSH様の機能があり、甲状腺に働いて、甲状腺ホルモンの分泌促進をしています。そのため、一見TSHの値は低下したように見えただけで、実際は、妊娠前と同様の状況だと考えられます。12週から甲状腺ホルモン剤を服用されていますので、これから無理なく安定した甲状腺ホルモンが血液を流れることになります。妊娠初期に治療をせず妊娠12週からの投薬でしたが、妊娠経過や胎児発育に問題はなかったと考えられます。