赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバー気になる子どものようす

気になる子どものようす

Q. 8か月の男児。2~3か月ぶりにほかの赤ちゃんと会ったら大泣きします (2020.8)

  • (妊娠週数・月齢)8か月

もうすぐ9か月になる男の子の母親です。新型コロナウイルス感染症の影響で、同じくらいの月齢の赤ちゃんの友だちと2~3か月会えていなかったのですが、最近また会う機会ができました。その際、自分から友だちを触りにいくくせに、向こうから触られたときや「あっ!」などと言われたときなどに、泣いてしまうようになりました。私が抱っこをしてなだめても、しばらく泣き続けます。泣きやむとまた遊び出すのですが、同じことが繰り返されます。一緒に遊んでいる友だちのお母さんに抱かれた際は、目を合わせて笑ったりしていますが、他の赤ちゃんが泣くとつられて泣いてしまいます。家では、一人遊びもよくしますし、私たちを呼んで笑顔を見せたり、最近は、自分の欲求を泣いて伝えるようにもなりました。大人とのかかわりは普通なのに、赤ちゃんにだけやたらと反応して大泣きします。これは発達において正常なのでしょうか?

回答者: 高橋惠子先生

 よその子どもに接して泣くようになったのは、この2、3か月間のお子さんの成長のせいだと考えられます。9か月頃の成長が、周囲の様子を以前とは異なるものにしているのでしょう。

 まず、生後9か月ごろの赤ちゃんの2つの成長に注目してみましょう。
 第一は、この時期の運動能力とそれに伴う心の発達です。この時期の子どもは、ハイハイや類似した方法(おなかを床につけたまま進んだり、座ったまま前進するやり方)で、自分の身体を自分で移動させることができるようになります。中には、テーブルなどにつかまって立ち上がる子どももいます。このような身体の成長は、子どもが自分の意志や要求を持つ能力を支えます。子どもは、自分から好きな物に近づいたり、欲しいものを取りに行こうとしたりします。つまり、周りの世界を自分の視点で見るようになり始めていると思われます。それが、2、3か月前とは異なる行動を引き起こしていると考えられます。

 第二の成長は、「特別な愛着の対象」(子どもがもっとも好きな人で、困ったときには必ず護ってくれると信じている人)がいよいよ明らかになることです。誰に対しても愛着行動(じっと見たり、笑顔をむけたり、抱っこをねだるなどの行動)を見せていた子どもが、周囲の人々の中から自分にとっての「特別の愛着の対象」を見つけて、この人にかわいがられるともっとも喜び、頼りにし、この人が離れていこうとするものなら後を追ったりします。つまり、子どもは、周囲のそれぞれの人の自分にとっての関心を識別し始めるのです。「特別な愛着の対象」を基準にして、周りの人間をグループ化していると考えるとよいでしょう。たとえば、「特別な愛着の対象」(多くの子どもでは母親)と「その他の人」(母親以外のすべての人々)という2グループ、あるいは、「特別の人」と「特別の人に似た人」(母親と同じ若い大人の女性)と「そうではない人」(おとなの男性、老人、子どもなど)という3つのグループという具合にです。

 もちろん、育つ環境によっていろいろな人間関係のグループ化が考えられます。また、発達には個人差がありますので、すべての子どもが9か月でこのようになるとも言えません。およそ9か月ごろの赤ちゃんの成長だと考えてください。およそ9か月ごろの子どもは、それ以前の赤ちゃんが、誰にでも(あるいは何にでも)関心を示したという時期を卒業して、自分の眼で周りを見、自分の意志で行動しようとしていることに注目しましょう。

 このころの子どもは、他の子どもに自分なりの関心を持ち、自分なりのつき合い方を期待していると考えられます。特におとなしいタイプの子どもでは、他の子どもが自分に触れてきたり、大声を出したりするのは予期した方法とは違うので好まないでしょう。でも、その子どもの母親に抱かれても平気なのにというのが投稿者の指摘ですが、それは、その母親が自分の母親に似たグループの人(子どもの扱いに慣れた同じ年代の女性)だとしているからだと理解できます。それに比べて、子どもを警戒するのは、子どもというグループがまだ新しく、どのような人であるかの情報が少ないためです。子どもは大声を出したり、手加減せずに手をだしたり、時には泣いたりというような新しい種類の人間ですので、うまく付き合うには、子どもとはどういう人間かをもっと知る必要があります。

 子どもは友だち経験を重ねながら、子どもとの付き合いを楽しめるように成長します。遊ばせようとすると泣くのであれば、しばらく会わせないという選択もあるでしょう。しかし、子どもは子どもが好きですので、公園などで子どもが遊んでいるのを見せたり、赤ちゃんが好きな年上の幼児と遊ばせたりなどを試みてはいかがでしょう。ゆっくりとお子さんの成長を楽しんでください。