赤ちゃん & 子育てインフォ

ホーム妊娠・子育て相談室インターネット相談室Q&Aバックナンバー病気・予防接種

病気・予防接種

Q. 0か月の娘。先天性代謝異常検査で、VLCAD欠損症の疑いありと言われました。 (2020.9)

  • (妊娠週数・月齢)0か月

先日長女を出産し退院したばかりですが、「先天性代謝異常検査の再検査の必要があるので受診してください」と病院から連絡がありました。VLCAD欠損症の疑いがあるとのことです。初めての出産で「わが子がもし難病だったら…」と思うと不安でたまりません。いったい、それはどのような病気なのでしょうか。また再検査をして、その病気と確定される確率はどのくらいなのでしょうか。

回答者: 板橋家頭夫先生

 VLCAD欠損症とは脂肪酸代謝異常症の一つです。細胞内に取り込まれた長鎖脂肪酸(炭素数が13以上の脂肪酸で多くの油脂に含まれています)は、貯蔵されるとともに、エネルギーが必要なときには細胞の中のミトコンドリア内で脂肪酸が順次代謝されて効率よくエネルギーが産生されます。この代謝経路に必要な酵素のうちの一つである極長鎖アシルCoA脱水素酵素(very-long-chain acyl-CoA dehydrogenase: VLCAD)が欠損するとエネルギー産生が停滞し、一方で体内のブドウ糖やグリコーゲンが代わりに過剰に消費され、さまざまな臨床症状が出現することがあります。新生児期もしくは乳児期早期から重度の心筋症(心不全や不整脈、突然死に関連します)や低血糖をきたして生命予後の改善が困難である例、乳幼児期にライ様症候群(肝機能障害・肝腫大・意識障害・けいれんなどがみられます)で発症する例、幼児期以降に横紋筋融解症を呈する例、成人期における筋痛、筋力低下のみの場合もあります。

 わが国における頻度は、新生児マススクリーニングのパイロット研究(2005年~2012年)の結果によると、約16万人に1人の発見頻度と推定されています。遺伝形式は常染色体劣性です。タンデムマス法による検査で発見されても診断が確定するわけではなく、診断基準に照らして所定の検査を実施し診断が確定されます。お子さんはおそらく無症状であろうと思われますが、エネルギー需要が増加したときにはじめて症状や異常検査所見が出現する場合がありますので、再検査の結果次第では専門施設の受診をお勧めします。タンデムマスを用いた本症のスクリーニング検査の精度は高く、再度の採血が必要な例は対象疾患の0.1~0.6%といわれています。