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発育・発達

Q. 2歳5か月で発達障害の診断。結果を受け入れられません。 (2021.2)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

2歳5か月の男の子です。これまでの健診ではとくに問題もなく、育てにくさを感じたこともありませんでした。しかし、保育園に通い始めて5か月ほどたったある日、園の先生から「集団活動に参加できなかったり、全体指示に従えなかったりすることがある」と聞き、気になったので小児科の発達相談へ。そこでADOSという検査を受け、「中度~重度の自閉症」で自閉スペクトラム症と診断されました。知的な発達は年齢相応だそうです。そういう傾向が少しはあるのかも?と思ってはいましたが、「中度~重度」とのことに正直ショックを受けてしまいました。いまでもその結果を受け入れられず、「この子のどこが?」「この年齢だとまだわからないのでは?」と疑問です。自閉スペクトラム症についても調べましたが、よく言われる特徴は0ではないですが(たとえばオウム返しは少しある等)、あまり当てはまりません。この検査結果をどの程度信じ、息子とどう接していけばよいでしょうか? 療育は必要でしょうか?

回答者: 帆足暁子先生

 これまで育てにくさを感じたことがないのに、小児科の発達相談でのADOSの検査では「中度~重度の自閉症」で自閉スペクトラム症と診断されたのですね。でも、お子さんにはあまり当てはまらないので、その検査結果の信頼性と、お子さんへの接し方、療育の必要性について、知りたいということですね。

 まず、検査について考えてみます。ADOSは「Autism Diagnostic Observation Schedule(自閉症診断観察検査)」の略で、たぶん、 第2版だったのではないかと思いますが、自閉スペクトラム症の診断の精度が高いものとして広く認められている診断ツールです。でも、だからと言って検査結果が100%正しいとは限りません。もし、「中度~重度」とされた検査結果に疑問を感じるのであれば、実施した発達相談の担当者に結果についての詳細な説明を求めることができます。もしくは、別の機関で再度受けることもできるかもしれません。大切なことは、検査結果が正しいか間違っているかを含め、あなたが納得できる説明を受けることです。

 そして、一番考えたいこと。検査結果はお子さんにとってどのような意味があるのでしょうか。
 あなたは、保育園の先生の話が気になって発達相談に行かれたのですね。そのときあなたは、お子さんの実態を知って、お子さんに合ったかかわり方を知りたいという、お子さんにとってのメリットを考えたのではないでしょうか。だとするならば、診断や検査結果についてどう考えたらよいのかということよりも、お子さんにとってメリットのある情報を得ることが一番肝要だと思います。

 ただし、その前提となるのは、お子さんがいまの生活で困っていることがあるということです。 保育園の先生の話のように「集団活動に参加できなかったり、全体指示に従えなかったりすることがある」ことで、お子さんが悲しかったり、つらい気持ちになることがあるのでしょうか。困っているのでしょうか。もし、お子さんが困ることがあれば、それがどのようなことから起きているのかその原因を整理し、どのようにしたらお子さんにとってよいのか、その手だてを見出し、現状を改善していく情報を得る必要があります。

 でも、困っていないとしたら? それならいまのままでよいのです。

 かつては診断が一番重要視され、診断されるとイコール障害がある、と考えられた時代がありました。でも、2001年に世界保健機関(WHO)によって採択されたICF(国際生活機能分類)により、「人の生活機能(生きていくこと)が制限されているとき、人の生活にはなんらかの障がいが伴っている」とする考え方に変わりました。つまり、生活していて困っていることがあるから、障がいがある、ということです。

 たとえば、お子さんが、集団活動に参加したいのに参加できなかったり、全体の指示に従えなくて不安になってしまったり、ということがあれば、それをお子さんが生活で困っていること(障がい)として捉えて、お子さんが集団活動に参加できたり、全体の指示に従えるためには、どのようにしたらよいかを考えることになります。それに、療育が役立つのであれば療育を受けることはお子さんにとってメリットがあることになります。

 お子さんは、いま、2歳5か月。これから、たくさんのことを吸収し、成長していくときです。お子さんが幸せな人生を送るために必要なことは、自分が愛されているという実感です。どんなことがあっても見捨てられない確信です。そして、トラブルに出遭ったときには自分を信頼して、それを乗り越えるさまざまな方法を使って克服していく力です。
 そのためにはどうすればよいか、がきっと一番大切なことだと思います。

 もし、どうしたらよいのか、気がかりや不安があるようでしたら、子ども家庭支援センターや保健センター等で信頼できる専門家に一緒に考えてもらうのもよい方法です。