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出産について

Q. 夫婦ともに高齢。不妊治療で顕微授精を行っています。 (2021.4)

2人目の子を希望して不妊治療中です。私がもうすぐ43歳、主人が44歳になります。しかも主人の精子が、顕微授精しかできないぐらい状態がよくありません。顕微授精はよい精子を選んで受精させると聞きますが、高齢なので障害のある子が生まれる確率が高くなるのでは?…と不安がつのり、眠れない日が続いています。妊娠できる可能性が低いことやダウン症の可能性が高くなることは理解しています。ダウン症に関しては、NIPT(新型出生前診断)で心の準備ができるかと思うのですが、自閉症に関しては、高齢出産との関係がわからずとても不安です。高齢出産での自閉症の発症率はどのくらいなのでしょうか? 顕微授精でよい精子を選んだとしても、高齢だと子どもに障害のある可能性は高くなりますか?

回答者: 安達知子先生

 自閉症は発達障害の分類の1つである自閉スペクトラム症の中に含まれるもので、「コミュニケーション(対人関係)が苦手」、「興味・行動の強いこだわり」という特徴が見られます。その原因はまだ不明な部分が多いものの、遺伝子の関与が大きく、一部は特定の強い遺伝子の関与も示されていますが、たくさんの遺伝子が複雑に関与している可能性が報告されています。また、環境因子や親の高齢化などが指摘されています。中でも母親よりも父親の年齢の影響が強いとする研究が近年複数報告されており、本年に入ってからも動物実験で、加齢によって精子のDNAが変化することが自閉症の発症に影響する可能性が報告されています。頻度は、1%程度とされますが、報告者によってかなり異なります。父親の年齢が 10 歳上がるごとに、自閉スペクトラム症になるリスクが 2 倍以上となるなどの報告があります。しかし、絶対値が高いわけではなく、20歳代の親ならば1.5%の発症頻度が、40代の親ではわずかに増えて約1.58%になる等の報告もあります。

 一方、43歳の女性の妊孕性は低く、生殖補助医療を行っても生児獲得率は3.1%と低いものです。また、顕微授精でよい精子を選ぶとは、形態が正常で、ある程度運動している外見が良好な精子をできる限り選んでいるということだけで、形のよさと染色体や遺伝子の異常はほとんど関係ないとされています。2人目を求めて確率の低い中、不妊治療を進めていくのがよいのか、夫婦で十分に話し合ってください。

 なお、子どもの先天異常の中には、染色体異常を伴わない心奇形を含めた種々の奇形もありNIPTではわからず、その頻度は小さい異常も大きい異常もあわせて約2%とされます。
 しかし、どのような子どもたちも極めてまれな頻度で選ばれた卵子と精子の結合によって生まれてきた奇跡の生命であることには変わりなく、障害があってもその子の特徴、特質として捉えて受け入れ、支援し、社会になじませて育んでいく必要があります。