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気になる子どものようす

Q. 嘘をつく5歳の息子。どう対応すべきでしょうか? (2021.12)

  • (妊娠週数・月齢)5歳

5歳9か月の男の子です。年長になったぐらいから、ほめられたい、感心されたい欲求のためか、嘘をつく(知らないことを知っていると言ってしまう)、誇張して話すことがよくあります。一時期はかなりひどく、会話のほとんどがそんな感じなので注意をしていたのですが、絶対に折れず言い争いになるため、軽く受け流す対応をしていました。だいぶ減ってきたと思っていたのですが、最近子どもが「保育園で嘘つきと言われる」と言ってきました。確かにそんな場面を見たことがあります。私が「気をつけようね」と言ったら、「やめられないんだよ。(嘘が)出ちゃうんだよ」と言ってきました。ほめられたい気持ちはわかりますが、嘘つきと言われていると知り、どうしたらよいのか悩んでいます。やめさせる方法はあるのでしょうか?受け流す対応の方がよいのでしょうか? 4月から小学生になり友人関係が変わる中、大人は「ほめられたいんだな」と理解できても、友だちからすると嘘になるだろうし、仲間はずれなどが心配です。親としてどんな対応をすればよいのでしょう?

回答者: 高橋惠子先生

 幼児の嘘には二種類あると考えられます。

 第一種の嘘は、発達の証だとされるものです。3歳くらいになると多くの子どもは、真実ではないとわかりながら嘘が言えるようになります。調べてみると、「絶対に見ない」と約束した玩具を実験者が席を外したすきに見てしまったのに、3歳ころになると「見なかった」と嘘がつけたというのです。在席しなかった実験者は真実を知るはずがないことを理解したうえで、約束を守ったと嘘をつくのは、知的な能力の発達のひとつだと考えられるというのです。言葉の発達がよい、いろいろな知識を豊富に持っている、あるいは、空想が好き、というような幼児ほど、たくさん嘘をつきます。しかし、このような嘘は、「うそでしょう!」「うそつき!」と仲間やおとなに容易に見破られ、自然に減っていきます。多くの幼児は嘘をつくという獲得した能力を使って、ある期間、楽しんでいるのですから心配はいりません。

 第二種の嘘は、他人の愛情を求めたり、関心を引くための“手段”とされているのではないかと思われるものです。質問者はお子さんの嘘がこの種のものではないかと案じておいでのようです。たしかに、子どもの嘘には、親に「ほめられたい」「叱られたくない」「同情してもらいたい」「自分に関心を持ってもらいたい」というような気持ちが込められていることがあります。そして、保育園でも、友だちの関心を引こうと「○○ゲームを持っている」「××遊園地に行ったんだ」などと言うことが頻繁にあると、「うそつき!」といわれたりすることになります。

 もしも子どもの嘘に愛情や関心を引くという意図が感じられたら、子どものその切実な気持ちに対応しない限り、嘘は減らないことになります。このような場合に子どもに伝えたいメッセージは、「嘘をつかなくても大丈夫だよ」「本当のことを言っても嫌いにならないよ」ということだと思います。そのために次のような3つのことを試してみてはいかがでしょう。

 第一に、両親は子どものあるがままを受け容れる努力をしてみましょう。ある心理臨床家は「無条件の受容」の大切さを指摘しました。嘘をつく子は嫌い、嘘をつかなければ愛してあげるなどというように、もしも~ならという“条件”をつけずに、子どもを丸ごと受け容れることです。これによって、子どもは、自分が悪い子のときにも、失敗したときにも、愛してもらえるのだと安心することができます。このような条件付きではない親の愛情を子どもは必要としているのです。

 第二には、子どもが嘘をついていることがわかったときには、なぜそのような嘘を言うのか考えてみましょう。嘘をつく理由があるはずです。母子関係も父子関係も、見直してみましょう。子どもによい子であること、できる子であることを期待しすぎていないか、あるいは、子どもの失敗を厳しく叱っていないか、などを振り返ってみましょう。

 そして、第三には、親が嘘をつかないことです。子どもは親をよく見ているのです。特に、親が子どもとの約束を破っていないかを点検してください。親が約束を守らないと、言葉はいいかげんでいいのだ、嘘をついてもかまわないのだ、と子どもに思わせることになります。「嘘も方便」は子どもにはありえません。おとなは言っていることとやっていることが違うと、思わせないことが重要です。子どもとの約束が守れないときには、その理由をしっかり説明して理解させることが大切です。それが子どもに言葉の重みを教えることになり、そして、正直であることのお手本を示すことにもなります。

 「やめられないんだよ。(嘘が)出ちゃうんだよ」と説明する質問者のお子さんは、言葉の発達がとても順調なのだと思われます。微笑ましい説明ですね。子どもの発達を信じて、嘘について親が深刻にならないようにしましょう。上述のような親子関係の調整をされると、やがておさまるでしょう。