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気になる子どものようす

Q. 1歳10か月の息子。暴力的な行為に悩んでいます。 (2022.1)

  • (妊娠週数・月齢)2歳

生後1週間の男子と1歳10か月の男子のママです。次男妊娠中から長男のイヤイヤ期が始まり、何をするにも親が話す反対のことを言います。「これして」には「これしない」、「食べて」には「食べない」など。これぐらいは許容範囲なのですが、攻撃的、暴力的な行為がかなり目立つようになってきました。1歳ころより飼い猫を追いかけ回し叩いたりしてました。最近は、私や夫への顔面パンチが炸裂しています。外でしてるかはわかりません。そのたび、怒ったり、同じように顔をパチンとして痛いことを伝えます。「痛いー!」と泣いて、「ごめんなさい、もうしない」と言いますが、しばらくたつとまたパンチの繰り返しです。どうやって対処していいかわからず、かなり悩んでます。

回答者: 高橋惠子先生

 お子さんが「暴力的である」という問題の解決のためには、以下の3点について、お母さんに考えていただく必要があると思います。

 第一には、子どもが暴力的であるのは、お母さんが暴力を使って子どもの暴力を止めようとしているせいではないか、と考えてみてください。暴力はさらなる暴力を生みます。親に暴力で返されて痛みを感じると、子どもは他人をいじめるには暴力が有効だということを学びます。痛いからやめようとは考えません。また、親が暴力を使うと子どもはすぐに行為をやめるので効果があるように見えますが、恐怖心からやめただけで、いけない理由を理解してはいません。したがって、子どもが暴力的なときには、親子の間、家族の中から、一切の暴力、大声を出すなどの暴力的行為、そして、体罰を追放する必要があります。代わりに、まわりくどいようでも言葉を使って、暴力はなぜいけないのか、顔パンチされるとどんなに痛く、悲しいかを、繰り返し説明してください。なかなか効果が出ないかもしれませんが、お母さんはがんばってください。言葉で気持ちを伝える能力を持つことが人間の最高の特徴です。間もなく2歳になるお子さんは、おとなの言葉を理解しますし、子どもの言葉を聞こうとおとながその気になれば、発話能力も充分に発揮します。言葉による親子の関係はきっと楽しいと思います。

 第二には、子どもの発達におけるイヤイヤ期の意味を、親がよく理解しておくことが必要です。子どもは決して何にでもイヤイヤといっているわけではありません。イヤイヤ期は子どもの「自分」が成長してきたこと、発達が順調に進んでいることを示しています。この時期の子どもは、「自分はこうしたい」「自分はこれが好き」などとして、自分の意志を表現しています。したがって、親が譲ってもよいときには、子どもの意思を尊重して子どもにまかせ、譲れない事柄については、「なぜダメなのか」の理由を、言葉で伝えることが必要です。親は、決して、暴力で子どもの意思を抑えてはいけません。子どもと言葉で交渉していると、子どもの意図や理由がわかり、「そうだったのか」と親が教えられることも少なくありません。

 第三には、赤ちゃんの誕生前後のお子さんの気持ちを、親は理解しておく必要があります。これまでは一人っ子として両親に大事にされてきた長子は、次子の出現に戸惑っているはずです。その戸惑いが、イヤイヤや暴力を増やしているのかもしれません。親の関心が赤ちゃんに移ってしまい、きっと寂しい思いをしていることでしょう。赤ちゃんが誕生したときには、親の気持ちを長子にしっかり向け続けることが必要です。長子とはいえまだ2歳にもならない幼児です。「お兄ちゃんだから」と言いすぎていないか点検して見てみてください。これまでのように、時には長子をしっかり抱きしめて、「大事な子ども」であることを伝えましょう。赤ちゃんが寝ているときには、長子と遊んだりすることも大切です。こうして、自分が以前と同様に大切に思われていることがわかると、長子はやがて「手のかかる新参者」をかわいがるお兄ちゃんになれます。暴力の陰に、親の関心を引こうという切実な子どもの願いが潜んでいないかも考えてみてください。