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妊娠中の気がかり(体重・食事・病気・体調など)

Q. 妊娠10週の検査でバセドウ病の可能性を指摘されました。 (2022.6)

  • (妊娠週数・月齢)妊娠3か月 (8〜11週)

妊娠10週の採血検査の結果で、産科の医師から「もしかしたらバセドウ病の可能性がある。胎児に影響するかも」と言われました。そのときの数値は、FT4は1.50で基準値内でしたが、TSHが0.017と非常に低値でした。4か月前に甲状腺の専門病院で採血検査をしていますが、そのときはTSH 0.96、FT3 3.8、FT4 1.13とすべて基準値内でした。4か月前は正常だったのに急にバセドウ病になることはあるでしょうか。動悸、息切れなどの症状はまったくありません。再検査は26週にと言われていますが、そこまで放置していてもよいのでしょうか。甲状腺の専門病院をすぐに受診すべきでしょうか。バセドウ病はどんな病気で、どのように胎児に影響するのかもよくわからず不安です。

回答者: 安達知子先生

 甲状腺ホルモンは生きて活動していく上で必要なホルモンです。甲状腺機能の状態は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺ホルモンである遊離T 4(FT4)とのバランスでおおよそ判断しますが、TSHだけでより簡略にスクリーニングすることは多いです。一般的にTSHが高いときは甲状腺機能が低下、TSHが極めて低いときは甲状腺機能は亢進していると考えられます。妊娠中は、甲状腺機能低下症では、流産しやすくなったり、胎児の脳の発育に影響が出ること、また、甲状腺機能亢進症(主にバセドウ病)では、胎児奇形、とくに骨の奇形を起こしたり、母体がかぜをひいたことなどをきっかけに甲状腺クリーゼと言う命に関わる危険な状態となったり、妊娠高血圧症候群を起こすなど、ハイリスク妊娠となります。そのため妊娠初期に甲状腺ホルモンの検査をすることが多いのです。

 しかし妊娠初期(8~13週位)には胎盤からHCGと呼ばれるホルモンがたくさん作られます。このHCGはTSHと同じ甲状腺刺激作用があるため、甲状腺が刺激されてたくさん甲状腺ホルモンが分泌されます。そのため妊娠初期は、TSHは多く分泌する必要はなく、しばしば低値を示し、甲状腺機能亢進症と間違えやすくなります。今回FT4は正常範囲で妊娠前にも甲状腺機能は正常とのことですので、まずは心配ないと思われます。

 ところで、なぜ4か月前に甲状腺専門病院で機能検査を受けたのですか? 甲状腺の腫大などがあるのでしょうか?

 今回の産科医のコメントは、おそらくTSHが極めて低くFT4は正常範囲内のやや高めですので、念のための再検査、しかもいま再検査しても多量に分泌されているHCGの影響が出るので、TSHの評価をするために少し時間を空けてから再検査することを考えているのでしょう。強くバセドウ病を疑っているのなら、15~16週には他の甲状腺機能の評価指標も入れて再検査に入ると思います。26週の採血の指示は、おそらく通常の妊婦健診での血液検査の時期にあたるので、そのときに合わせているのだと思います。