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産後のからだ

Q. 完全母乳育児。スイーツなどを食べると乳腺炎になりやすいですか。 (2022.7)

  • (妊娠週数・月齢)0か月

生後2週間となる子を、完全母乳で育てています。スイーツや揚げ物など、脂質を取りすぎると母乳が乳腺に詰まり、乳腺炎になると聞きました。しかし、ネットで調べると食事と乳腺炎は関係ないという記事もありました。もともとスイーツが好きで、乳腺炎のリスクと食事が関係ないなら食べたいと思っています。食事と乳腺炎の関係を教えてください。ほかにも乳腺炎を予防するために気を付けることについても教えてください。

回答者: 市川香織先生

 生後2週間で、完全母乳の育児をされているとのこと、自分の食べたものと母乳の関係について気になるのですね。そもそも、乳腺炎の根本的な原因は、「乳汁のうっ滞」と「感染」だと言われています。しかし、必ずしも細菌感染を伴わない乳腺炎もあります。作られる母乳の量と赤ちゃんの飲み取る量が同じくらいで、左右まんべんなく赤ちゃんが母乳を飲んでくれていれば、乳腺炎は起こりにくい、すなわち「乳汁のうっ滞」が起こりにくい状態でいられます。

 「お母様が食べたもの、とくに脂質が多いと乳腺が詰まりやすくなる」と言われていた時期があります。しかし、国内外の研究が進み、現在は、特定の食物が乳腺炎のリスクになることはないと結論付けられました。日本では、日本助産師会・日本助産学会が共同で出している『乳腺炎ケアガイドライン2020』において、特定の食品の制限をしても乳腺炎の発症を予防できる根拠がないため、脂肪摂取の制限や乳製品の制限は勧めないと提案しています。ですから、母乳育児をしているからといって、スイーツや揚げ物などを制限する必要はありません。もちろん、食べすぎはよくありませんが、バランスのよい食事を基本にしながら、お楽しみのメニューもあってよいと思います。

 一方で、乳腺炎の誘因となることはたくさんあります。たとえば、授乳回数が少ないことや授乳を飛ばすこと、急に授乳をやめることは、乳腺炎を引き起こすきっかけになります。「乳汁のうっ滞」を引き起こしやすい状態ですよね。また、赤ちゃんの飲み方が浅くなっていたり、吸いつく力が弱かったりして、乳房から効果的に乳汁を飲み取ることができない場合も、母乳が乳房に残りやすくなります。現在、生後2週間ということですので、このくらいの時期から乳汁の産生は増えてきます。いまは母乳が作られる量と飲んでくれる量のバランスがとれた状態ですが、乳汁が過剰に作られれば、乳腺炎になりやすくなります。お祝いごとなどでお食事の量がいつもよりぐっと増えるなど、乳汁がたくさん作られる機会があれば、乳房が張るような状態になるかもしれません。母乳は赤ちゃんの飲む量に応じて作られ、1回ずつすっきり飲み取ってもらうことが大切です。もし母乳がいつもより作られすぎているなとか、乳房が少し張っているなと感じたときは、いつもより赤ちゃんにしっかりと飲み取ってもらうようにしましょう。赤ちゃんがしっかり飲み取るためには、赤ちゃんのお口が乳頭を正面からとらえて、乳輪全体をくわえてくれるくらい深く吸着する必要があります。うまく吸い付くと、お母様もぴたっと密着した感じがわかります。そして、ごくんごくんと飲んでもらいましょう。飲み終わった後に乳房が軽くなり、乳房にしこりや熱感はないかなども気をつけて見ておきましょう。

 ほかにも、乳房が圧迫されること(きついブラジャーやシートベルトなど)や、お母様のストレスや疲労がたまることも乳腺炎の原因になりうると言われています。乳腺炎の誘因はさまざまなのです。いまは、出産後の疲れを取ることに専念しましょう。夜間の授乳で頻回に起きている時期ですので、昼間もからだを横にして休む時間を取ることをお勧めします。食事、睡眠、活動のバランスが整ってくれば、乳房のトラブル予防だけでなく、産後のからだの回復も進みます。母乳育児が楽しく続けられるとよいですね。