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妊娠中の気がかり(体重・食事・病気・体調など)

Q. 妊娠5か月。スモークサーモンなどからのリステリア菌感染が心配です。 (2023.5)

  • (妊娠週数・月齢)妊娠5か月 (16〜19週)

妊娠5か月の妊婦です。リステリア菌についての質問です。先日、イタリアンのお店でスモークサーモンが入ったクリームのパスタとレアチーズムースを食べたのですが、その後、スモークサーモンとナチュラルチーズは、リステリア菌感染の可能性があるため控える必要があったことを思い出しました。いまはまだ症状はありませんが、潜伏期間も長いですし、無症状のこともあると知り、心配しています。産婦人科でリステリア菌感染の検査はできるものなのか、赤ちゃんに影響はないのかなど教えてほしいです。

回答者: 安達知子先生

 リステリア菌感染症は、多くは食物を介してリステリア・モノサイトゲネスという細菌に感染して発症します。しかし、細菌性食中毒のような典型的な腹痛、嘔吐や下痢などの急性胃腸炎症状は通常示しません。妊婦は、感染リスクは通常人よりも高いですが、症状は軽微なことが多く、主な症状は38度以上の発熱、悪寒、背部痛、吐き気などで、子宮内感染症、絨毛膜羊膜炎、切迫流早産をきたすこともあります。胎児に垂直感染すると、重症化しやすく胎児敗血症から胎児死亡、新生児感染症(髄膜炎など)や新生児死亡につながる可能性があります。

 潜伏期間は数日から数週間と推定されています。リステリア菌は0~45 ℃の状況でも発育増殖できるため、中途半端な加熱処理の食品や汚染されている食品の冷蔵庫内長期保存では菌が増殖している可能性があります。そのため、ソフトチーズ、十分高熱で加熱されていない冷蔵食品(例:ホットドッグやパテ、生ハムなど)、冷蔵された燻製魚介類、生乳などが感染源となりえます。妊娠中はこれらの食品摂取を控えることが、予防上最も大切です。症状があれば、血液や髄液からリステリア菌を検出して確定診断できる可能性はありますが、無症状の場合はおそらく菌の増殖も少なく、検出や診断は難しいと考えます。抗菌剤は、ペニシリン系やアミノグリコシド系は有効ですが、汎用されるセフェム系は無効となります。

 現在妊娠5か月になっているとのことですが、無症状とのことですので、血液からの細菌培養などを行っても陰性となると考えられ、診断はできないと考えられますし、感染していない可能性も十分あります。これからもしばらくは自覚症状の有無をチェックし、健診時に胎児の状態などをよく診てもらうなど、経過観察になると思われます。なお、新生児は、分娩中または出生後に感染することもあるので、生まれたときの状態やその後の哺乳状況などにも注意することが必要です。