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妊娠中の気がかり(体重・食事・病気・体調など)

Q. 妊娠32週。妊婦健診で脳梁欠損の疑いがあると言われました。 (2024.7)

  • (妊娠週数・月齢)妊娠9か月 (32〜35週)

妊娠32週ですが、先日の妊婦健診で脳梁欠損の疑いがあると診断されました。現時点では、脳梁欠損単独の可能性が高いとのことです。脳梁欠損とは、いったいどういう状態のことなのでしょうか。また、赤ちゃんにどのような症状が出やすいのでしょうか。インターネットで調べても何が本当かわからず、あれほど待ち遠しかった出産が不安に変わってきて、夜もなかなか眠れません。

回答者: 安達知子先生

 脳梁は、左脳と右脳をつないでいる神経繊維の束で、左右の脳の間で情報を交換するのに役立っています。通常、胎児期19週ごろには脳梁が完成されるので、脳梁欠損は妊娠20週以降の胎児超音波検査で診断されますが、より詳細にみるために、胎児MRIなどの検査が行われることもあります。全体の欠損と部分的な欠損があり、多くの例では原因は不明ですが、一部に染色体異常もあり、また遺伝的因子の関与も考えられています。発生頻度は、1.8/10,000人の割合ともいわれています。
 脳をはじめとするほかの奇形や合併症がなければ無症状で、異常所見を認めないことが多いです。しかし、一部の奇形を合併していると、生後まもなくから小児期までに水頭症、知能発達障害、小頭症、けいれん(てんかん)などがみられることもあります。水頭症の一部では手術を考慮することもあり、また、てんかんは抗けいれん薬の服用が必要です。現在のところ、ほかの合併症はないとのことですので、無症状で成長されることが期待されます。
 以下は付記とも言えますが、近年の研究によって脳梁欠損症では、運動、言語、その他の認知機能の発達が遅い、運動調整機能が低い、痛みの閾値(しきいち)が高いことなどが起こりやすいことがわかってきました。また、青年期から成人期にかけて、実社会での会話がなんとなくぎこちない、複雑な問題を合理的に考えることができにくい、現実の問題に対処できにくいなど、自分では気づいていない状況で、社会生活を営むことが難しい状況になりやすいこともわかってきました。個人の特質と捉えることができるかもしれませんが、身近でしっかりと見守ってあげてください。
 脳梁障害は、合併症があればそれに対しての治療は必要ですが、病気で治療が必要というよりは「上手につきあっていく」ことが必要とも考えられています。効果的なセラピーなども知られているようです。 脳梁障害を支える専門家:行動心理学者や神経科医、神経心理学者、作業療法士、小児科医、理学療法士、言語聴覚士などへの相談や患者と家族をサポートする団体の存在もあるようです。