出産について
Q. 第1子出産時に大量出血。第2子の妊娠・出産は可能でしょうか (2024.8)
- (妊娠週数・月齢)産後
数年前に第1子を出産しました。その際、弛緩出血と胎盤遺残で2.5Lほど出血しました。いままで子宮の病気や手術をしたことはありません。最終的に胎盤鉗子で子宮壁に付着していた胎盤を掻き出して、なんとか出血が止まったそうです。
担当だった産婦人科の先生に次の妊娠について伺ったところ「胎盤遺残を繰り返す可能性があるので気をつけてね」と言われました。助産師さんからは「分娩の進みが初産の割にとても早かったので、次回は墜落産(編集部注:分娩施設に到着する前に赤ちゃんが生まれること)の可能性がある」と言われました。
そもそも弛緩出血や胎盤遺残とは、どういうものでしょうか。繰り返すものなのでしょうか。
また、このような状態だと、次の妊娠は希望しないほうがよいのでしょうか。もしくは大量出血しても対応できるように計画分娩にしたほうがよいのでしょうか。
回答者: 安達知子先生
分娩は児が生まれたのち、胎盤が娩出されて終了します。胎盤は血管の塊のような組織ですので、剝がれると胎盤が付着していた子宮の内面から多量の出血が起こるのですが、すぐに子宮は強く収縮し、剥離面の面積を縮小させて子宮からの出血を止めます。
弛緩出血は胎盤が娩出されたのちに子宮筋の収縮不良があり、大量出血になった状態です。原因としては、子宮筋が疲労して収縮不全となるもの、胎盤や卵膜が子宮壁に遺残して子宮筋の十分な収縮が妨げられるもの、児の娩出時に子宮の下部の筋肉などにできた小さい断裂などから出血して止血しにくいものなどがあります。子宮筋の疲労は、巨大児、多胎妊娠、羊水過多などで過伸展があった場合や分娩時間が極めて長い場合、子宮筋腫合併の場合などに起こりやすくなります。
質問者の方の弛緩出血は胎盤遺残のためと考えます。胎盤遺残の原因は、子宮筋が薄いあるいは血流が悪い場合(筋腫核出術後や前置胎盤など)や、何らかの子宮内膜(脱落膜)の炎症があった場合、子宮奇形や分葉胎盤などの場合ですが、原因不明のことも多くあります。癒着胎盤になっていると大出血や、産科DICと呼ばれる血液が最終的に固まらなくなってしまう状況となり、大量の輸血療法や子宮の止血術、最悪は子宮摘出まで必要なこともあります。
次回妊娠はもちろん可能です。しかし、前回のエピソードから同様な状況を繰り返す可能性もあります。そのため、次回妊娠時は妊娠末期に自己血の貯血などを行うことが推奨されます。また、児娩出後の胎盤娩出時に細心の注意を払い、子宮収縮剤の十分かつ適切な使用を行い、胎盤遺残の有無や子宮収縮状況、止血状況を観察することが必要です。前回の初産時に分娩経過が極端に短かった場合は、次回妊娠時は墜落産のリスクやそのときの出血対応を考え、計画分娩も考慮するとよいでしょう。出産は周産期母子医療センターなどの分娩施設をお勧めします。