気になる子どものようす
Q. 3歳。娘のごっこ遊びが気になるのですが・・・ (2024.10)
- (妊娠週数・月齢)3歳
3歳7か月の娘を育てています。娘は、早い時期からごっこ遊びが好きで、とくにケンカの仲裁や、園での先生と子どものやり取りといったテーマが好きです。最近は人形を「好ましくない言動をする人」、自分を「被害を受ける人」、私を「仲裁者」に設定し、繰り返し遊んでいます。そして、娘の気持ちを代弁させたり、相手をいましめるようなストーリー展開を私に求めてきます。「好ましくない言動をする人」は悪で、「被害を受ける人」は「仲裁者」に救われて善になるというイメージです。このような展開を繰り返すことで、娘が一つの行動を単純に「良い」か「悪い」かで判断するようになるのではないかと心配しています。
最近、娘が「私は良い子だよね?」と聞いてきました。私は「どんなときでも〇〇ちゃんのことが大好きだよ。良い子、悪い子というのはないんだよ」と答えました。これまで私は、娘の行動について注意することはあっても、「良い子」「悪い子」といった評価をしないように努めてきました。娘からこうした質問が出ることで、自分の育て方に不安を感じています。 「良い」「悪い」と単純に二分することなく、もっと幅広く理解できるようにするにはどうしたらよいでしょうか。また「〇〇したから、××な子」という評価ではなく、娘の存在自体が大切であるということを、どのように伝えればよいでしょうか。夫も、この様子を見ていますが、相談すると「考えすぎでは?」と言われます。アドバイスをいただけると助かります。
回答者: 遠藤利彦先生
近年、いわゆる「赤ちゃん学」の研究が国内外で飛躍的に進展し、まだ言葉を十分に獲得していない早い段階から、子どもがさまざまな心の力を有していることが明らかになってきています。そして、こうした研究結果の一環として、ヒトの子どもが基本的に「良き心」や「思いやりの心」を備えて生まれてくるのではないかという考えが提示されるに至っています。
たとえば、ヒトの子どもは、早くから意地悪なキャラクターよりもやさしいキャラクターを好むということや、不公平なキャラクターよりも公平なキャラクターを好むということが示されています。また、よちよち歩きがようやくできるようになったくらいから、誰か近くに困っている人がいれば、実際には助けられなくとも、何とか助けようとする行動の傾向があるということなども知られています。
こうしたことからすると、お子さんが「良い子」にこだわることは、ある意味とても自然なことだと言えます。加えて、就学前の子どもには、良いか悪いかをはっきり決めようとする二分法的な思考のパターンがあることも広く知られるところであり、人には「長所もあれば、短所もある」という人格の多面性や、「うれしい反面、悲しくもある」といった複雑な感情の理解などは、学童期にかけてゆっくりと進むということも明らかになっています。こうした点からしても、「良いか、悪いか」を気にかけるお子さんの言動は、決して心配するようなものではないことがわかるかと思います。
重要なことは、子どもの周りの大人が、幼児段階のその時点では必ずしも十分に理解されなくとも、「悪いところもあるけど、ここは良いよね」などと、子どもの視点を拡げてあげる働きかけを一貫して続けていくことかと思います。こうした働きかけの中で、お子さんはやがて人の人格の多面性や感情の複雑性にしっかりと気づけるようになるはずです。