妊娠中の気がかり(タバコ・アルコール・薬・レントゲンなど)
Q. 妊娠に気づかず、排卵誘発剤を服用してしまいました。 (2025.1)
- (妊娠週数・月齢)妊娠2か月 (4〜7週)
不妊治療のタイミング療法で妊娠しましたが、医師も私も妊娠に気づかず、排卵誘発剤のレトロゾール(フェマーラ)を5錠処方されて、5日間服用しました。そのあと、超音波子宮卵管撮影検査(フェムビュー)も行いました。現在6週目で心音も確認できていますが、とくにフェマーラを服用したことが心配でなりません。
回答者: 安達知子先生
情報が少なく、妊娠のどの週数で服用されたのかがわかりませんが、妊娠中のレトロゾールの服用と妊娠中の子宮卵管撮影検査の2点について解説します。
まずは、一般的に薬剤服用による妊娠の継続や胎児への影響についてです。排卵直前や排卵直後、排卵から2週間以内ということであれば、薬による妊娠継続や胎児への催奇形性については問題ありません。大きな問題があれば、そもそも妊娠しないか、早期流産となるためです。
レトロゾールの妊娠中の投薬は禁忌になっていますが、仮に妊娠4週~6週で服薬されたとしても、5日間程度ではほとんど問題はないです。女性ホルモンには卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の2種類があります。妊娠しますと、排卵部位に形成される卵巣の黄体は妊娠黄体となって、とくに妊娠維持に不可欠な黄体ホルモンを大量に産生します。女性ホルモンは、コレステロールを原料として、まずは黄体ホルモンを作り、黄体ホルモンから男性ホルモンが作られます。その後、アロマターゼという酵素の作用によって男性ホルモンから卵胞ホルモンを作ります。レトロゾールはこのアロマターゼの作用を阻害することで卵胞ホルモンの産生を抑制し、この情報が脳に伝わり、卵巣を刺激する作用が出現します。
また、受精卵の子宮内着床後は絨毛と呼ばれる初期胎盤からも女性ホルモンの産生が起こってきます。このことからも妊娠維持に必要な黄体ホルモンの産生を、妊娠初期に服用したレトロゾールが低下させる可能性はまずはないでしょう。すなわち、妊娠黄体や絨毛からの女性ホルモン産生能は極めて高く、短期間のアロマターゼ阻害剤の影響などは問題にはなりません。乳がんの治療のように連続的・反復性の投与を行っていますと、影響が出る可能性も多少あるかもしれませんが。
ただし、妊娠中は静脈血栓塞栓症が起こりやすい時期といわれており、レトロゾールにも血栓症を誘発しやすい作用があることから、血栓症発症には気をつけてください。
超音波子宮卵管撮影検査を行ったことのほうがむしろ心配です。排卵後まだ着床が十分でない時期に、造影剤(超音波の検査のため生理的食塩水と空気を混ぜたような液体)を子宮内に挿入したカテーテルから卵管へ流すということで、異所性妊娠や流産を誘発する可能性はあります。しかし現在、子宮内に胎児が元気に育っているのならば、心配はないかとも思いますが、注意深く着床部位を見てもらってください。
最後に、どの妊娠にも薬剤服用などとは関係なく、一定の割合で胎児の奇形が出現する可能性はあり、50人に1人は小さい異常も含めて、胎児の奇形などが認められるということをご理解ください。