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産後のこころ(マタニティ・ブルー)

Q. 生後8か月。産院選びを後悔し、ネガティブな気持ちを引きずっています。 (2025.4)

  • (妊娠週数・月齢)産後

生後8か月の息子を育てています。出産した産院は、高級ホテルみたいで先生の評判がとてもよく、それを理由に選びました。しかし出産のとき助産師さんの対応が悪く、「おなかの子は旦那の子?」と聞かれたうえ、ソフロロジー式で出産したのですがとても痛く「痛い!」と言ったら怒られました。息子が生まれても「次の分娩があるから」と言われ、カンガルーケアも十分にできませんでした。主人にクレームを入れてもらったら謝罪されたのですが、助産師さんに言われたことがつらくて、情けなくて泣いてしまいました。
また母乳をあげるときに気持ちが悪くなるので、院長先生に相談したところ「自分の子どもなのに何を言ってるの? 昨日、泣いていたし精神的なものもある」と言われ、漢方の女神散を出されました。
入院中は助産師さんに「夜中は赤ちゃんを預けて」と言われたので預けたのですが、母子同室で母乳をあげていれば、もっと母乳が出たのではないかと後悔しています。退院後は混合栄養でしたが、母乳が次第に出なくなり生後3か月からミルクで育てています。完全母乳で育てられなかったことに罪悪感があります。

産院のことを昨日のことのように毎日思い出し、この産院を選んだことや母子同室にしなかったこと、母乳で育てられなかったことをずっと後悔しているので、とてもつらいです。助産師さんの言葉も忘れられず、初めての出産が嫌な思い出になり、そのせいか育児に自信がもてません。乗り越える方法を教えてください。

回答者: 帆足暁子先生

 初めての出産で大変な思いをされましたね。そして生後8か月まで、つらい思いを抱えて過ごされてきました。
 ソフロロジー式分娩による出産やカンガルーケアのことなど、たくさん考えて産院を選ばれたのだと思います。それだけ大切に考えた出産なのに、あなたが予想していたこととは違いすぎて、ずっと後悔してつらい気持ちになっているように思います。

 あなたがいまを乗り越える方法を考えたいと思います。

 まず、あなたが体験されたことは、誰にとってもつらい体験になるということを理解してください。ソフロロジー式分娩による出産は、陣痛の痛みを赤ちゃんに出会う前向きなものと捉えて、リラックスして出産に望むことで痛みを和らげることができると言われています。それでも痛かったという人はいます。あなたが「痛い!」と言ったことは怒られることではありません。また、あなたが「母乳をあげるときに気持ちが悪く」なったのは、不快性射乳反射(D-MER/ディーマー)という現象で、授乳中に不快な症状が起きることがあることもわかってきています。つまり、いずれのことも出産にまつわる現象であり、あなたにはどうすることもできないことです。ですから、あなたが責められることではないのです。それを責められたのですから、こんな理不尽なことはありません。あなたがつらくなるのは当然です。

 また、あなたは母子同室にしなかったこと、同室だったらもっと母乳も出たのではないかと後悔されています。でも、あなたは助産師さんに「夜中は赤ちゃんを預けて」と言われたので、そうするものだと思ったのです。あなたは初めての出産で、相手は専門職です。言われたとおりにすることが専門にかなっていると思うものです。あなたは何も悪くありません。

 それなのにつらいのは、あなたが産院選びを「後悔」しているからではないでしょうか。もっとちゃんと調べればよかった、あの産院で出産しなければよかったのにという思いが頭の中でぐるぐる回り続けて、その中から出られなくなっているように思います。

 実は、つらい気持ちは「後悔」することから生じやすいのです。「あのとき、ああしていれば」という強い思いは、過去を変えたいという強い願いです。でも、過去は変えることができません。ですから、結論のないつらい思いが限りなく生じてしまうのです。

 そこから抜け出すために大切なことは2つ。
 1つは、過去はどのようなことも変えることはできない現実を自分に言い聞かせます。もちろん、そんなことはわかっているけれどつらいものはつらい。そうなのですが、ここから抜け出すためには、自分で自分をコントロールしようとしてください。
 そして、もう1つの大切なことは、過去を変えたい強い願いをこれからの未来に活かします。なぜなら未来は、あなたが自由に作ることができるからです。

 いまのあなたは、育児にも自信がもてていません。でも、育児に自信のもてる未来は作ることができます。お子さんはいま、生後8か月。そろそろ人見知りも始まるころです。お子さんはあなたが抱っこしているときは安心して笑顔になるのではないでしょうか。でもほかの人が抱っこをしようとすると泣いてあなたを求めると思います。あなたがお子さんに安心感を作っているからです。あなたは良い子育てをしています。

 そうやって、一つひとつお子さんの姿をきちんと見ていきましょう。そして、こども家庭センターや保健センターのスタッフなどであなたが信頼できる人をぜひ見つけてください。ポイントは、インターネットの情報を信用しないこと。あなたが対面で会ったときの直感です。なぜなら直感は、あなたの五感と第六感で総合的に瞬時に判断した結果だから。自分の直感を信じてください。そのスタッフと一緒に、お子さんを育てていくことができれば、子育てに自信のあるあなたになることができます。

 いったん、変えられない過去にはふたをして、未来の明るいあなたのために、いま、これからできることに気持ちを向けてみませんか。あなたを大切に考えてくれるスタッフと一緒に。