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妊娠中の気がかり(体重・食事・病気・体調など)

Q. 妊娠16週で水ぼうそうに感染。胎児への影響を教えてください。 (2025.6)

  • (妊娠週数・月齢)妊娠5か月 (16〜19週)

妊娠16週4日で水ぼうそうに感染してしまい、先天性水痘症候群が心配です。インターネットで検索したところ、妊娠20週以降は発生率が0%とありましたが、妊娠15~16週は、おなかの赤ちゃんに感染しやすいのでしょうか。万が一、胎児に感染した場合は、どのような影響がありますか。治療法などはあるのでしょうか。

回答者: 安達知子先生

 水ぼうそうは、水痘ウイルス感染により発症しますが、飛沫感染(空気感染)と水疱内容の接触感染の経路があり、極めて感染力の高いことが知られています。潜伏期間は約2週間です。ワクチン接種や小児期の感染などで抗体をもっていると、その後、感染しないか、感染しても軽症で経過します。
 しかし、近年抗体のない若い成人の割合が10%かそれ以上に増加してきています。抗体のない女性が妊娠中に感染しますと、本人の症状が重症化する可能性があり、発熱や発疹のみならず、肺炎や肝炎、脳炎などを併発することもあります。そのため、感染者との接触などで水痘感染が疑われる場合にはガンマグロブリンの点滴投与を、感染した場合は速やかな抗ウイルス薬の経口投与が必要ですが、これらの投与は胎児奇形を増加させることはありません。
 一方、水痘ウイルスは胎盤を介して胎児に移行し、胎児に四肢皮膚瘢痕、四肢低形成、眼症状(小眼球症、網脈絡膜炎など)、神経障害(小頭症、水頭症、脳内石灰化など)などの先天性水痘症候群を起こすことがあります。その頻度は、妊娠中期の最もリスクの高い時期(12~22、23週くらい)で1.4%程度、初期はそれよりも低く、後期(妊娠28週以降)で発症することはほとんどないと言われています。一般的に、先天性奇形の発症率は、心奇形が約1%、小さい奇形から大きい奇形、染色体異常に合併するようなものまで含めて、おおよそ2%とされています。水痘ウイルス感染と関係なく、低いながらも一定の頻度で奇形は起こります。
 ご相談の方はワクチン接種や小児期に感染既往があれば、たとえ弱くてもある程度の抗体(免疫)をもっており、胎児への影響は低いと考えます。しかし、今回妊娠16週で発症されていますので、まずは早期に抗ウイルス薬(アシクロビル)の投与を受けてください。母体へのアシクロビル投与が先天性水痘症候群の予防ないしは改善できるかについては残念ながらまだわかっていません。家族や周囲への二次感染にも気をつけてください。
 また妊娠後期、とくに分娩直前や分娩直後に水痘を発症した場合は、新生児に水痘を発症して重症化するリスクがあり、多くは母体への治療と共に、新生児にもガンマグロブリン投与による予防やアシクロビルによる治療が必要になります。いずれにせよ、母体と胎児に対する慎重な経過観察は必要となります。