歯とお口のケア
Q. 2歳。寝ぼけてベッドにぶつかり口から出血しました。 (2025.6)
- (妊娠週数・月齢)2歳
2歳の女の子がいます。夜中、寝ぼけてベッドの上で立ち上がって転び、ベッドのふちに口をぶつけて出血してしまいました。数分後に血が止まりましたが、歯ぐきからなのか、歯が折れて出血したのかわかりません。こういう場合は、何か応急処置などしたほうがよいのでしょうか。泣き止んで寝ましたが、日中に歯科医院を受診すれば大丈夫ですか。
回答者: 井上美津子先生
夜中に子どもの口の中から出血が見られたら、焦ってしまいますよね。 頭などを打っていなければ、まずは子どもをできるだけ落ち着かせて(保護者も冷静になるよう努めて)、子どもの口の中をチェックしましょう。
歯ぐきからなのか、歯が折れて出血したのかわからないということですので、歯冠部(口の中に出ている部分)の大きな破折や歯の位置がずれてしまっている、歯ぐきや上唇小帯(上唇の裏側のスジの部分)が切れている、ということはないと思いますが、一応確認しておくといいでしょう。 数分後に血が止まって、子どもも寝てしまったということですので、翌日の歯科受診でよろしいかと思います。
歯がグラグラしてなかなか血が止まらない場合や、歯の位置が明らかにずれてしまっている場合などは、早めに受診して応急処置を受けたほうが望ましいと思われます。 ただ出血が止まっていて寝てしまったのでしたら、子どもが寝ている間は歯も歯ぐきも安静が保たれるので、翌朝もう一度よく確認して受診しましょう。
前歯を勢いよくぶつけると、ぶつけた衝撃が歯に加わり、歯冠部ではなく歯根部(歯ぐきや歯槽骨という骨の中に埋まっている部分)が折れてしまったり、歯の周囲の組織(歯ぐきや歯を支える歯槽骨など)が損傷を受けて、出血が見られることがあります。 数分で止血したのでしたら、それほど大きな損傷ではないかもしれませんが、歯科受診してエックス線写真を撮って、歯根部の状態を見てもらうとよいでしょう。 もし、歯根の破折が起こっていたり、歯根と歯槽骨をつなぐ線維の層(歯根膜)が損傷を受けて広がっていたりした場合(歯の動揺もみられます)、できるだけ受傷歯の安静を図るために 両脇の歯と接着するなどの固定処置を行うこともあります。
翌朝は、お口の中をやさしくチェックしてあげ、再出血はないか、歯並び・かみ合わせなども変わっていないかを確かめましょう。歯根や歯の周りの組織が何らかの損傷を受けている可能性もあるので、朝食は前歯でかみ切らなくてもすむ軟らかい食品と牛乳などにして、受診してください。
歯根破折や歯周組織の損傷が起こらなくても、強い衝撃を受けた歯は歯根の先端部がダメージを受けて、数週間から数か月後に歯の色調が変化してくることがあります。感覚や歯の栄養などをつかさどる歯髄という歯の内側の組織では、神経や血管の出入り口が歯根先端部にあるので、そこが傷つくと歯髄全体が炎症や変性を起こしてしまうためです。最初は少し赤みを帯び、徐々に黒ずんでくることなどがあるので、しばらくは経過を見ていく必要があります。(歯髄の処置が必要になることもあります)。
乳歯の外傷では、次の永久歯が生えてくるまで年に最低2回くらい歯科医院での経過観察が望まれます。 いまは、かかりつけ歯科をお持ちのご家庭も増えているので、定期検診と一緒に外傷歯の予後も見てもらうといいでしょう。