気になる子どものようす
Q. 6歳。妹の誕生で赤ちゃん返りが始まりました。 (2025.7)
- (妊娠週数・月齢)6歳
6歳の息子と生後1か月の娘を育てています。娘を出産してから、息子の赤ちゃん返りが始まりました。毎日、親の気を引こうとします。そんな息子に夫はイライラして怒ってばかりで、怒られた息子は、30分近く泣き続けます。息子と少しでも一緒に遊ぶ時間を作ろうとはしているのですが、遊んでいても親が困るようなことばかりして、限られた時間があっという間に過ぎてしまいます。
息子は、もともと自己肯定感が低めな感じでしたが、さらに自己肯定感が下がってしまったのか、先日「僕なんて生まれてこなかったらよかった」と言われました。息子にそんなことを言わせてしまい、親として反省しかありません。どうすれば息子の気持ちを満たすことができるのでしょうか。
回答者: 高橋惠子先生
質問者は、なぜ息子さんが「赤ちゃん返り」をしているのかを理解しておいでですね。次子が誕生したときに、親が最も心を配るべきなのは、赤ちゃんにではなく長子のほうにだとされています。それは手のかかる赤ちゃんの登場で、長子はこれまでひとり占めにしてきた親の愛情がもうなくなるのではないかと真剣に心配するからです。そして、赤ちゃんのようにふるまう「赤ちゃん返り」をして親の気持ちを確かめることがあるのです。
まだ幼い長子の場合には、哺乳びんでミルクを飲みたいと言ったり、おもらしをしたりして、まるで赤ちゃんのようになって親を困らせて、親の自分への愛情を確かめます。そして、5、6歳の長子では、質問者の息子さんのように親をわざと困らせたり、自信なさげにふるまったり、言葉が発達している子どもでは「僕なんて生まれてこなかったらよかった」などと表現して、必死に親の関心を自分に向けようとします。これが「赤ちゃん返り」をする長子の心理です。
子どもにとって親の愛情は安心や幸せの大切な基盤ですから、子どもは必死で、おそらく自分では意識せずに、このような行動をしてしまうのです。子どもは親の愛情が以前のように自分に対して続いているかどうしても知りたいのです。したがって「赤ちゃん返り」は子どもの心のSOSであると、親はしっかり受け入れなくてはなりません。
「赤ちゃん返り」への対処法は“大切な子ども”であることを、両親ともが子どもにしっかり伝えることに尽きます。決してわがままだと叱ったり、無視したりしてはいけません。
まだ幼い長子の場合には、哺乳びんを欲しがったら与え、おもらしをしても叱ったりせずに、不安になっている気持ちを十分に受け入れましょう。赤ちゃん時代のように、抱っこしたり、話しかけたり、長子と二人きりで遊んだりすることが有効です。少し年長の長子では、“大切な子よ”“大好きよ”などと繰り返し、しっかり言葉で子どもに伝えることです。子どもの眼を見て話をよく聞くことも大切です。質問者のように、子どもが好む遊びを一緒にするのもよいでしょう。その際に親を困らせるようなことをするのは、子どもが親の愛情を確かめているのですから、受け止めてください。言語発達がよい子どもでは、子どもが一人で読むのは難しい厚い本を選んで、毎日1ページずつでも読み聞かせるのはどうでしょう。子どもは親の特別の愛情だと受けとるのではないでしょうか。それぞれのお子さんの好みを通して、愛情をもらっていることが伝わるように工夫してみましょう。そして時には、膝に乗せたり、抱きしめたりするスキンシップも重要です。
赤ちゃんの世話が忙しくて、そんなことはできないと言われるかもしれません。しかし、長子にとっては切実な願いです。長い時間は必要ではありません。長子だけのための短くても濃密な時間を作りましょう。赤ちゃんがおとなしいとき、眠っているときなどを上手に使いましょう。そして父親の協力も必要です。時には赤ちゃんのケアを父親がして、母親と長子だけの時間を作ってはいかがでしょう。二人で散歩をしたり、図書館に行ったりするのもよいでしょう。
こうして愛情が満たされていくと、長子は落ち着いていきます。だんだん次子のケアなどのお手伝いなどを頼むとよいでしょう。「ねんねしているか、ちょっと見てきて」「泣いたら教えてね」「新しいおむつを持ってきて」などと頼み、できたら「ありがとう」と伝えます。こうして長子は安心し、自信を取り戻していくことでしょう。