歯とお口のケア
Q. 1歳8か月。じっとしているのが苦手なのですが歯科は受診できますか。 (2025.12)
- (妊娠週数・月齢)1歳7か月
1歳8か月の息子はじっと座っているのが苦手です。気になるものがあるとすぐに手を伸ばして触ったりします。これまで歯科を受診したことはないのですが、先日、保育園の歯科検診で初期のむし歯が見つかりました。ずっと座っていられなくても歯科受診はできますか? どのようなことに注意すると、スムーズに受診ができますか。
回答者: 井上美津子先生
1歳児にとって、歯科医院でおとなしく座って(または寝て)、歯科医師の指示通りに口を大きくあけて診察や治療を受けることは、かなりハードルが高いものと考えられます。たまたま機嫌がよければ、おとなしく口の中を見せてくれるでしょうが、初めてですと診療台そのものを怖がって座ったり、寝たりもしてくれない子どもは少なくありません。まだ言葉で説明して子どもの協力性を高めることは難しい年齢ですので、説得するというより、優しい声かけをして必要な処置は手早く行うような対応が適当でしょう。
普段、低年齢の子どもの診療に慣れている歯科医師でしたら、保育園や保健所での歯科検診のときのように、保護者と膝を突き合せて膝の上に子どもの頭をのせ、保護者に軽く子どもの身体を押さえてもらって診察を行うなど、工夫をしてもらえるかと思います。また、歯科医師と保護者が和やかに話しているところを見せたり、和やかな雰囲気を感じると、子どもの気持ちも和んで不安や恐れが軽減されます。 保護者自身があまり緊張しすぎないことも大切です。小児歯科専門でなくても子どもを多く見ている歯科医院では、診療室の雰囲気を明るく落ち着いたものにして、子どもが恐れを感じるような器具などを直視させないようにするなどの配慮をしていると思います。歯科医師やスタッフが、笑顔であいさつしたり、優しく言葉かけなどをして接してくれると、子どもも「怖い」というイメージを抱かなくて済むと思います。
保育園の歯科検診で発見された初期むし歯ということですので、診察(保護者からの問診や口の中のチェック)や保健指導、薬物塗布などで済むことも多いかと思われます。ただし、エックス線写真などで検査したら、見かけよりむし歯が進行している場合もあり、乳歯を削って詰め物をするなどの処置が必要になると、身体の動きを抑制して処置を行うかもしれません。どんな処置が必要で、どのような対応法があるかを歯科医師とよく相談して、選択するとよいでしょう。その際には、お子さんが不得意な刺激(大きな音、まぶしい光など)とか、吐きやすい、反射が強いなどの情報も伝えておくとよいと思います。
また、低年齢児のむし歯に関しては、削って詰めたりすること以上に、口の中の環境を改善して、これ以上むし歯を進行させない、増やさないという対応が重要です。現在のお子さんの口の中はむし歯ができやすい環境にあることを前提に、歯みがきなどのお口のケアや食習慣などを見直してみるとよいでしょう。
じっとしていないお子さんだと、日々の歯みがきもおとなしくみがかせてくれなかったり、なかなか時間をかけてみがけなかったりと、多々あるかと思います。短時間で効果的な歯みがきのやり方などを歯科医院で教わるとよいでしょう。家庭での仕上げみがきのときに「お口をあーんして見せてね」などと練習をしておくのも、歯科受診をスムーズにするのに役立つかと思います。
食生活面でも、哺乳習慣が就寝時や夜間に継続していたり、糖分の多い菓子類や飲料などを頻繁に飲食している子どもは、早期にむし歯ができやすいことが報告されています。 1歳を過ぎると、口の中にむし歯菌(ミュータンス菌)が定着する子どもが増えて、また3回の食事だけでなくおやつとして砂糖を含む飲食物をとり始める子どもが増えてきます。歯科医師、歯科衛生士にアドバイスをもらいながら、食習慣の改善を図ることも大切です。