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子どものこころを育てる 3

子どもは白いキャンバス? 
そこに色をつけるのは、最初はやはり親ではと思いますが…。

赤ちゃんは決して
「白紙」で生まれてくるわけではありません

 「赤ちゃんは白紙の状態で生まれてくる」とよく言われます。仮に本当だとしたら、毎日その子に接している親は、確かにどんな色にも染めることができるかもしれません。しかも白いうち、つまり早い時期ほど染めやすい、ということになります。
 「3歳までは言ってもわからないからたたいて教える」「小さいときにこそ厳しくしなければ」という人、さらに「早い時期の教育にこそ効果がある」という人は、きっとこうした思いがベースにあるのでしょう。
 確かに「まるで吸い取り紙が水を吸い取るように」何かを覚えてしまったり、できるようになったりする赤ちゃんや子どもを目の当たりにしていれば、早い時期にこそ、正しく色をつけなければ、と思うのも無理からぬことではあります。
 でも赤ちゃんは決して白紙で生まれてくるのではないし、どんな色にも染まるような存在ではないのです。あなたの赤ちゃんをじっくり観察してみてください。生まれたときから何かを持っているなと思うのではありませんか。

赤ちゃんはこの社会で生きていくための能力を
インプットされた状態で生まれてきます

 まず、人間の赤ちゃんは人間に共通の性質をいくつも持って生まれてきます。これは心理学の研究で、しだいに明らかになってきた事実です。
 たとえば、赤ちゃんは生まれてすぐの頃から、まわりのモノから「人間」だけを取り出して、特に興味を示します。目の前で大人が舌を出し入れしたり、表情を変化させると、これに反応を示したり、まねをしたりします。大人の話す言葉に対しても、いろいろな反応を示したりします。
 人として、人の輪の中で生きていくため、赤ちゃんにはこうした反応傾向、言ってみれば「能力」が、あらかじめプログラミングされているのです。

赤ちゃんはそれぞれ
個性を持って生まれてきます

 また、人には持って生まれた個性もあります。研究者は、これを「気質」と呼んで、大切に考えていこうとしています。
 新生児室にずらりと並んだ、生まれたばかりの赤ちゃんたちを思い出してみてください。ある子はよく泣き、ちょっとした音でも目を覚まし、別の子はよく眠り、少しの物音では起きません。おっぱいの飲み方や泣き方も、実にさまざまです。
 このことからも赤ちゃんは決して「白紙」ではなく、さまざまな個性を持って生まれてくると考えられるのではないでしょうか。そしてこれは、赤ちゃんが決して大人の言うままになる存在として生まれてくるのではないことをも示しています。
 赤ちゃんは生まれたときから自分なりの個性や生き方を主張している、そう考えたほうがよいのではないでしょうか。
 実際、赤ちゃんは持って生まれてきた「見る」「聴く」などの能力を駆使して、自分が好きな状態や好きな環境を知ったり、自分なりの応答をしたりもしています。
 抱っこの仕方がちょっと違うだけで身をよじったり、授乳中、ちょっと乳首が離れただけで怒り出したり……そんな経験はありませんか?
 そして、これらの微妙な「好き嫌い」は、赤ちゃんによって違うのです。
 赤ちゃんは最初から個性を持って、人生を出発しています。親に必要なのは、そうした個性を受け止め、その子に合ったやり方で接していくこと。たとえば、同じ親から生まれたきょうだいだからといって「すべて同じ」というわけではないのです。

赤ちゃんはさまざまな能力や個性を持って生まれてきます。
「白紙で生まれてくる」などと考えるのは、親のおごりかも…

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