赤ちゃん&子育てインフォ 妊娠・出産・子育ての確かな情報をお届けする − 公益財団法人母子衛生研究会の情報提供サイトです

Part2
放射線と放射性物質の基礎知識 4ページ目 2012年7月掲載

※本稿は2012年7月改訂 第2版です。第1版はこちら

内部被ばくをどう防ぐ?

 2012年5月現在、外部被ばくよりも広範囲にわたる人々を不安にさせているのが、水や食物の放射能汚染による内部被ばくです。そこで、水や食物の放射能汚染が現在どの程度のものなのかを理解し、今後も出てくるであろうさまざまな数値について、ご自身でもある程度判断できる方法をお話ししたいと思います。

ベクレルとシーベルト

 内部被ばくに関する報道などで、一般の方にもっとも分かりにくいのが、単位の違いです。食物に含まれる放射性物質の量はベクレル(Bq)という単位で表されますが、内部被ばくの年間の上限値はシーベルト(Sv)で表されるため、食物の放射線量が実際にどの程度危険なのかがよく分からないという質問もいただきます。
 ひと言でいうと、ベクレル(Bq)は放射線の強さ、つまり食品から検出される放射線のレベルを表す単位で、シーベルト(Sv)は放射線を浴びたときの人体への影響度を示す単位です。 (1シーベルト(Sv)=1000ミリシーベルト(mSv)=1000000マイクロシーベルト(μSv))。
 食物に含まれる放射性物質の量が、実際に人体にどれくらいの影響を与えるかを調べるには、ベクレルをシーベルトに換算する必要があります。


 放射性物質による人体への影響(mSv)は、
 「食物1kgあたりの放射能の量(Bq/kg)×実効線量係数(Sv/Bq)×摂取量(kg)×1000」
 で算出できます。


 実効線量係数とは、摂取した放射性物質の量と被ばく線量の関係を表す係数で、放射性物質の種類によって異なり、体内の組織や臓器に沈着した放射性物質の量や時間的変化を追跡調査して割り出しています。

放射性ヨウ素の実効線量係数は「2.2×10−8」(Sv/Bq)。放射性セシウムの実効線量係数は「1.3×10−8」(Sv/Bq)です。10−8は1億分の1なので、それぞれ「2.2÷1億」「1.3÷1億」で計算できます。

たとえば、福島市で3月18日に飲料水に含まれていた放射性ヨウ素の最大値は1kgあたり180Bqでした。この水を1ℓ(≒1kg)飲んだ場合、体に与える影響は、
180×2.2×10−8×1×1000=0.00396(mSv)


となり、この水を毎日1ℓ1年間飲み続けると、1年間で1.45mSvの内部被ばくを受けることになるということです。

単位(Sv、mSv、μSv)
ここではミリシーベルト(mSv)で統一して説明していますが、報道などではそのひとつ下の単位のマイクロシーベルト(μSv)が混在していることもよくあります。
1シーベルト(Sv)=1000ミリシーベルト(mSv)=1000000マイクロシーベルト(μSv) で、マイクロシーベルトで年間摂取上限量を表すと、放射性ヨウ素で50000μSv、放射性セシウムで5000μSvとなります。

食品における放射性物質の新たな基準値

 飲料水や食べ物に含まれる放射性物質は、これまで事故後の緊急的対応として、原子力安全委員会が設定した指標をもとに、厚生労働省が規制値を定め(暫定規制値)、これを上回るものが国民の口に入ることがないように規制されてきました。水道水の摂取制限(乳児)が出されたり、野菜や魚の出荷制限が出されたりしているのは、暫定規制値を上回るものを、私たちが口にしないためです。
 厚生労働省が採用した上限値は、放射性ヨウ素で50mSv/年(実効線量で2mSv/年相当)、放射性セシウムで5mSv/年で、これは世界保健機関(WHO)などの国際機関の評価に照らしても、かなり安全側に立った妥当な数値と認められていました。
  そして2012年4月からは、より一層の食品の安全と安心を確保するために、長期的な視点から新たな基準値が設定されました。放射性セシウムの年間最大摂取量の上限をこれまでの5mSv/年から1mSv/年とし、すべての食品が均等に汚染されていると仮定して、日本人の一般的な食生活を1年間にわたって送っても、内部被ばく量が年間1mSv/年を超えないように、食品群ごとに新たな基準値(単位はベクレル)が定められました(表1)。


表1 飲食物摂取制限に関する新たな指標(単位:ベクレル/kg)
飲食物摂取制限に関する新たな指標

厚生労働省 医薬食品局食品安全部 「食品中の放射性物質の新たな基準値について」より

新たな基準値の考え方

今回の新たな基準値において、年間最大摂取量が5mSv/年から1mSv/年に引き下げられ、さらに食品区分とそれぞれの線量上限値についても変更がありました。

*食品区分の考え方:すべての人が摂取し代替がきかない「飲料水」と、子どもの感受性が成人より高い可能性に配慮した「乳児用食品」「牛乳」は区分を設け、それ以外の食品は個人が摂取する食品の偏りの影響を最小限にするために一括して「一般食品」として規制値を設けています。
*規制対象とする放射性物質:半減期が短くすでに検出が認められない放射性ヨウ素の基準値は設定せず、半減期が1年以上におよぶセシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、プルトニウム、ルテニウム106を対象にしています。表1は放射性セシウムの基準値ですが、セシウム以外の放射性物質は測定に時間がかかるため、各放射性物質の移行濃度を解析し、産物や年齢区分なども考慮して、合計して1mSv/年を超えないように放射性セシウムの基準値が設定されています。

基準値の食品を一定の割合で摂取した場合の被ばく線量

 表2は、基準値上限の食品を、「飲料水」「乳児用食品」「牛乳」については汚染割合100%、「一般食品」は汚染割合50%として、1年間摂取した場合の、年齢ごとの被ばく線量です。 乳幼児が主に口にする3区分の汚染割合を100%として計算しても、乳幼児の被ばく線量は大人の半分程度であり、乳幼児に配慮した基準値になっていることがわかります。また、実際には、基準値上限の食品を摂取し続けることは考えられませんので、現実の被ばく線量は、これより相当低くなることが予想できます。

表2 基準値の食品を一定の割合で摂取した場合の被ばく線量
基準値の食品を一定の割合で摂取した場合の被ばく線量

厚生労働省 医薬食品局食品安全部 「食品中の放射性物質の新たな基準値について」より

飲料水や食物の放射能汚染の現状

 2012年5月28日現在、水道水に関しては、福島県および近隣の各浄水場で放射性物質が検出されているところはありません。
 農畜水産物については、同じく5月28日に報告された調査結果によると、22都道府県の1106種類の検体のうち、新基準値を超過したものは3検体(宮城県産ヒラメ、栃木県産原木シイタケ、群馬県産イワナ)のみでした。
 基準値を超える放射性物質を含む食品が市場に出回ることはありませんが、心配な方は、厚生労働省のHPで「食品中の放射性物質の検査結果」が随時発表されますので、そちらを見ながら対応していくとよいと思います。(巻末URL集参照

妊娠中および授乳中の方へ

 妊娠中の方が飲食物から摂取した放射性物質が胎児に与える影響や、授乳中の方が母乳を通じて赤ちゃんに与える影響を心配する声が多く聞かれます。事故後、福島県とその近隣県の方の母乳から放射性ヨウ素が検出されたという報道に、不安を大きくしてしまった方もいらっしゃると思います。

 しかし冷静に考えてみれば、母乳が採取された日はちょうど水道水に放射性物質が検出された日に近く、その後は、水道水からの放射性ヨウ素検出はほとんどなく、実際に、母乳から放射性ヨウ素が検出された母親に対して改めておこなわれた調査では、放射性ヨウ素はどなたからも検出されませんでした(2011年5月17日厚生労働省発表)。

 現在、水や食品に対する放射性物質の新基準値が施行され、表2でみたように、基準値の食品を一定の割合で摂取した場合の被ばく線量も、わずかなものです。
 現段階で、お母さんが摂取した放射性物質が胎児や乳児に与える影響を配することはありません。それよりも、胎児や赤ちゃんへの影響を心配してお母さんの精神状態が悪くなってしまうことのほうが、よほど赤ちゃんには影響があると思います。

小さい子どもがいるご家庭の方へ

 放射性ヨウ素は大人に比べ、子どもへの影響が大きいのはたしかです(1歳未満児で8倍、5歳児で4倍程度という報告もあります)。「年齢による影響度の違い」の項に書きましたが、チェルノブイリ事故のときに子どもたちが摂取してしまった放射性ヨウ素の量は、現在日本で問題とされている量とはケタ違いでしたので、事故以降の被ばく線量について、心配することはないと思います。また、物理的半減期の短い放射性ヨウ素はすでに検出されていません。それ以外の放射性物質につきましても、新しい基準値は乳幼児の放射線への感受性が高い可能性を十分に配慮して設定されていますので、あまり神経質にならずに過ごしていただきたいと思います。

内部被ばくを防ぐ生活の工夫

 では最後に、内部被ばくをできるだけ少なくする工夫についてお話ししておきます。現段階での健康被害は心配する必要はありませんが、摂取しなくてよいものはできるだけ摂取しないほうがよいという意味で、予防的に知っておくとよいと思います。

  • 野菜はよく水洗いする
    表面に付着した放射性物質については、洗えばある程度は落とせます。仮に水道水が暫定規制値を超えていても、野菜に残る水分は少なく影響はないと考えられるので、よく洗うほうがよいのです。
  • 皮をむく
    やはり表面に付着した放射性物質を除去する効果があります。
  • ゆでこぼす
    放射性物質は加熱しても除去はできませんが、表面の放射性物質を洗い流す効果はあります


|4

連載・読み物

  • 子育てのための生活安全講座〜大災害を乗り越えていくために〜