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Part3
正しい水の使い方
2012年7月掲載

解説 多田 裕(東邦大学名誉教授)

※本稿は2012年7月改訂 第2版です。第1版はこちら

放射性ヨウ素の心配はすでにありません

 東日本大震災による福島原発事故によって漏出した放射性物質により、一部地域においておこなわれた乳児の水道水の摂取制限は、乳児だけでなく小さな子どもをもつ家庭に衝撃を与えました。その後すぐに値は下がりましたが、一度摂取制限の出た地域では、乳児や子どもに水道水を使用することを躊躇する家庭も多かったと思います。
 当時政府から発表された飲料水の暫定規制値(*1)は、放射性ヨウ素(*2)300Bq(*3)/kg(ミルクを主に飲んでいる離乳前の乳児は100Bq/kg)、放射性セシウム(*4)200Bq/kgでした。そして、摂取制限の原因になったのは事故後一時的に大量に飛散した放射性ヨウ素による汚染でした。放射性ヨウ素は甲状腺に集まり、子どもの甲状腺のはたらきがさかんなこともあって甲状腺ガンが起こりやすいため、栄養の大部分をミルクから摂っている乳児に対する水の汚染が問題になったのです。

 しかし、放射性ヨウ素は物理的半減期が8日と短いため、事故直後の一時的な数値が収まって以来、再び暫定規制値を上回ることはなく、現在では検出されることもなくなりました。したがって放射性ヨウ素に関しては、すでに心配する必要はなくなっています。
 今後は、半減期が1年以上の放射性セシウムなどによる水道水の汚染が起こらないよう、厳格な管理をしていくことになります。
放射性ヨウ素の値とそれに対する水の使い方については、第1版「Part3 正しい水の使い方」をご覧ください。

飲料水の新基準値はWHOの基準

 原発事故という想定外の事態に対して、国では暫定規制値を設定して、水道水やミネラルウォーターについても検査を行い、規制値を超えるものが人々の口に入らないように管理してきました。さらに2012年4月からは、緊急時の対応ではなく長期的な観点から、新たな基準値を設定したことは、Part1やPart2でもご説明したとおりです。
 この新しい基準値において、飲料水はすべての人が摂取し、代替がきかず、摂取量が多いことから、WHO(世界保健機関)が示している基準をふまえ、放射性セシウムの基準値を、暫定規制値の200Bq/kg(乳児は100Bq/kg)から10Bq/kgに引き下げました。飲料水の区分のなかには、水の代用飲料となりやすい飲用茶も含まれます。WHOの基準は、平常時における基準として設定されている数値なので、乳幼児を育てるお母さんにとっても安心な数値です。


(*1)暫定規制値
国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告している放射線防護の基準をもとに原子力安全委員会が設定した指標を厚生労働省が検討して定めた値。住民の避難や食品の出荷制限などの基準となる。
(*2)放射性ヨウ素
放射性物質のひとつ。ヨウ素は自然界にも存在し(コンブなどに多く含まれる)、ヨウ素127とよばれ、甲状腺ホルモンを合成するために必要な物質だが、今回の事故で問題になっているのは、自然界には存在せず、原子炉内で大量に発生し放射線を出すヨウ素131。
(*3)ベクレル(Bq)
放射線の強さ、つまり食品から検出される放射線のレベルを表す単位。放射性物質が実際に人体に与える影響はシーベルト(Sv)という単位で表される。ベクレルをシーベルトに換算する式は、「食物1kgあたりの放射能の量(Bq/kg)×実効線量係数(Sv/Bq)×摂取量(kg)×1000」(mSv)。 実効線量係数は、放射性ヨウ素=「2.2×10−8」(Sv/Bq)。放射性セシウム=「1.3×10−8」(Sv/Bq)。
なお、(10−8)は(1億分の1)なので、それぞれ「2.2÷1億」「1.3÷1億」で計 算できます。
(*4)放射性セシウム
放射性物質のひとつ。セシウム134、137などがある。ウランから生成されるため、核実験がはじまる前は存在しなかった物質。

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